大きなものから小さなものへ・視点の切り替わり


 先日アップした台南での写真、見て頂けましたか? 観光案内にはなっていないものの、ちょこちょこ写り込むあれこれが日本とだいぶ違うのは伝わったんではないかと勝手に思っています。

 海外に出るとよく思うのは、建材やペンキのような建築に使われるあれこれのものが、そもそも日本と違うんだろうな、ということ。そのへんでパッと目につくものってまずは建物、次に道路、あとは歩道のブロックや信号や、という感じで、それら一つ一つが日本で見慣れているものと少しずつ違うんですよね。

 そういう違いが積み重なって「よその国だなあ」という感じの演出になっているのが、国境を超えてスナップを撮る際の面白みだと思っています。逆にいうと、日本国内の場合はどこでも似たようなものを使っているので違いが出にくく、そういう点では目新しさを感じにくい点がネックです。

珍しい→広く撮りたい

 人間、初めて行くところでは目に入るもの全てが新鮮ですから、見えるもの全てを一枚の写真に写し込みたくなります。写真機材的には広角レンズを使って撮りたくなるんですね。

 広角は読んで字のごとく広い角度で写るレンズなので、両手を広げて「いっぱい!」というジェスチャーをするように、多くのものを写真に取り込むことができます。

 しかし旅先で撮った広角写真って、上手くやらないと「だだっぴろいだけやん」ってなりがちなんですね。

 2017年・台北のボツカットより。広く撮れているのは確かなんですが、「だからどうした」という感じがします。

撮る場所の馴染み具合による

 わたくし自宅からスタジオに通う道すがら、ほぼ毎日写真を撮るのがいつの間にか習慣になってしまいまして、我ながらよく飽きもせずに撮るなと思うのですが、スタジオに通うルートはいくつも選択できるのでけっこう飽きないんですね。

 ただ、通勤ルート内で広角を使うかというと、ほぼ出番がありません。

 なぜかというと、自分にとって通勤路は見慣れてしまっているので新鮮味ゼロで、それを改めて撮ってもしゃあないなという気持ちになるからです。

 かわりに、もっと写る角度の狭いレンズ、すなわち望遠レンズを付けていると、自分にとっても見慣れた通勤路の中から「おや」というものを拾い出して他の人に見せるのに良いんです。

 このレンズ、以前もこのブログで記事にしたレンズで、見慣れた通勤路から切り出して抽象化するのが非常に得意なレンズです。

 旅先でここまで抽象化してしまうと旅先の意味があるのか分からなくなってしまうので注意が必要ですが、旅写真を成立させる上で重要なのは「どこへ行った」だけではなく「何を見た」「どう見た」なんですよね。

 要は旅先の象をある程度は抽出して見る人に提示する必要があるわけで、積極的に望遠を使う必要があるな、と最近感じています。

 というか、2017年に台北を訪れた時の写真を振り返ると、まさに冒頭の「珍しいところに行ったから広角ドーン!」というのがどうしても多くなっておりまして、ある意味では写真を撮っていないじゃないの、と思う始末。ただ視野をそのままドーン! ドーン! を並べるだけでは、視点の提示が出来ていないので表現としての写真と呼べないんではないか、という話です。

 風景写真を1枚だけ提示するのであれば、こういったドーン! も良いのではないかと思います。逆に1枚だけ写真を出すのに抽象的な写真を提示してしまうと見た人が戸惑いがちなんじゃないでしょうか。
ただ複数枚写真を見せるのであれば、説明的なものも抽象的なものも両方必要なんだろうなと思います。

Patreonもありがたい存在

 月額で写真をお見せするPatreonというサービスをやっておりまして、そこでは本当に毎週毎週、その週に撮ったスナップ写真から良い感じのものをセレクトして見てもらっています。

 そうなると、同じような視点つまり同じような距離感、スケールでものを見てばかりだと、その私の目を通して写真を見ている会員さんたちも飽きちゃうと思うんですね。 

 職業的に、与えられた環境で与えられた被写体を撮る場合は、寄り引きでメリハリ付けないと、というのを気にするのですが、旅先でも日常スナップでも視点を変えるのって大事だなと思います。
 単に画角を変えるだけでなく、気持ちの面からもものの見方を変えると写真が違ってきますからね。

 「寄り引き両方撮っておこう」はあらゆるシチュエーションで有効な考え方と改めて思いました。


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