みつばち屋 嵐・宇和島取材2022・その6


 宇和島取材も後半に入りました。この日お邪魔したのは、宇和島で養蜂をされているみつばち屋 嵐の伊藤さんです。オフィシャルサイトはこちら

 嵐という屋号はどこから来たのかしらと思っていたところ、地名がそのまま「嵐」だそうでして、日本でもこの一文字で嵐という地名は他にないんではないか、というお話。私も寡聞にして知りません。全国のARASHIのファンが、地名の書かれた標識やなんかで記念写真を撮りに来られているそうです。そのあたりはこちらの記事に詳しいようですね。厳密には宇和島市内ではなく、津島町というところにあります。

 養蜂といえば敬愛するシャーロック・ホームズが一時引退していた際に養蜂家をやっていたなあ、という程度の知識しかありませんが、蜂蜜という食材はそれこそ近所のスーパーにも売っているもの。みつばち屋 嵐の伊藤さんは、大規模に工場で生産して、というスタイルではなく個人で作家さんのように養蜂しておられます。

試食

 そんな嵐で最初に蜂蜜の試食をさせていただきました。
 最初に一般的な市販の蜂蜜、次に伊藤さんのところの蜂蜜、という順番で食べてみると、最初の方はこれまで食べてきた普通の蜂蜜ですね、という感じだったのが、伊藤さんのところの蜂蜜は香りの良さ、複雑さ、後味のすっきり感が全然違います。俺がこれまでに食べてきた蜂蜜は一体何だったんだ、という気持ちになりました。

 蜂蜜のプロである伊藤さん、たんに蜂蜜で食っているだけではなく蜂蜜に対する造詣も情熱も凄い方でした。以前受けられたテレビ取材の際には放送出来なかったお話も色々伺うことが出来ました。
 要は良心の問題、誠実さの問題ですね。伊藤さんのところはまじりっけなしに、正面から「ちゃんとした」蜂蜜を嘘をつかずに作っておられるおかげで、よそさんとは試食して一発で分かってしまうくらい味に差がついてしまっています。結果から見れば、利益を優先すると、なかなかフェアネス100%というわけには行かないということなんでしょうね。

伊藤さん近影。情熱的です。
これがミツバチの巣箱。

 写真の世界、とくに教える側の業界になると、美辞麗句で飾り立てているサービスが乱立しており、羊頭狗肉じゃん、と思うものが沢山あります。いちいち指摘して回るとこちらが悪者になっちゃうしなあ、というためらいがあり、また報復で何をされるのか分からないので大人しくしている面があります。

 伊藤さんのところは「食えば明らかに違いが分かる!」というのがステキです。写真の「良さ」よりも明快なんじゃないかなあ。少なくとも私はそれくらい味の違いで衝撃を受けましたし、誠実に良いものを消費者に届けるんだ、という伊藤さんの姿に感銘を受けました。

養蜂の現場

 今回のハイライトは、私と同行者のしげさんも実際に養蜂の現場で撮影させていただくことでした。例のアレを着ることになりますよ、と伺っていたので事前からワクワクしておりました。

伊藤さんの例のアレ

 伺ったところによると、蜂も相手を見て刺すかどうか決めているらしく、巣から蜜を回収する際はガンガン刺そうとするようですが、今回の私たちのように微妙に距離を取り、手を出したり振り払ったりしなければそうそう刺されることはないとのこと。

 実際ありがたいことに私も無傷で済みました。

蜜蜂の巣箱。

 山間をドライブしていて、こういう箱を見かけたことがあったのを思い出しました。そうかこれは蜜蜂のおうちだったのね……とまたひとつ賢くなりました。知らなければ宗教施設かと思ってしまいそうです。

 と思っていると、伊藤さんがガスバーナーで何かに火を付けていらっしゃいます。何かと思ったら、このふいごマシンで煙を出し、蜜蜂に当てると大分大人しくなるのだとか。

 煙を当てながら巣箱の蓋を開け、その中から巣の出来た板を一枚引き抜きます。

 蜂。めっちゃ蜂です。ひとつの巣箱に数万匹単位で住み着くそうで、しかもひとつひとつの巣箱が別々のグループになっており、箱を数センチ動かすだけで巣から離れていた蜜蜂が帰れなくなるんだとか。

 人間も遠くから眺めたらそんなものかもしれぬ、と思いつつ、蜜蜂の生態についてあれこれ伺って非常に有意義な時間を過ごすことができました。

空飛ぶ農業

 伊藤さんに、養蜂というお仕事は生き物を扱う難しいお仕事なんですね、と伺ったところ、生き物相手の難しさだけでなく、蜜蜂の蜜を収穫するタイミングで雨が降ってしまったら収穫が限りなくゼロになってしまったりする、ギャンブル要素の強い仕事だよ、というお話。

 なるほど大雨が降ってしまえば蜜蜂が回収してくるはずの蜜が流れてしまい、それを巣に蓄えることもなくなるわけで、収穫がなくなってしまいます。

 また蜂じたい、一匹一匹に首輪をつけて繋いでおくわけにはいきませんが、同時に蜜蜂の行動範囲を知り尽くした上で巣箱を設置すれば、そのエリアの蜜を集めて来てもらうように誘導することも可能……というのはお話としてなら私にも理解できます。

 伊藤さんのところで販売されている河内晩柑の蜂蜜というのは、河内晩柑という種類の柑橘だけが植えられている山で、蜜蜂に蜜を集めさせているもので、個別の蜂にどうこうしろという命令は出来ないものの、エリアを限定、誘導してやると狙った種類の蜜を集められるそうで、そうしたお話を伺っていると養蜂の特異性がじわじわ伝わってきます。

「一言で表すなら『空飛ぶ農業』だね」、という伊藤さんの言葉、なるほどとしか言いようがありません。

暑かった防護服を脱いでほっと一息の伊藤さん

 そんな伊藤さんから深い愛情を注がれた蜜蜂の蜂蜜、私も風味が忘れられず、妻に自慢したくて東京に帰ってきたらすぐにネットショップで注文させてもらいました。

https://arashi-honey.com/

 皆さんも是非どうぞ。


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