Nikon Z7体験記


Z7をお借りした

 先日ニコンさんから声をかけていただいてNikon Z6IIを試用した、という記事を書いたのですが、その際に「あのお……Z7も貸していただけませんか?」とお願いしたところ、さくっとお貸しいただきましたZ7。

 Z6とZ7、何が違うか興味あったんですよ。
 仲の良いNikon Zユーザーのナイスミドルが「Zは7ですよ」とおっしゃっているのを耳にしたりして、そりゃその人が言うんだから間違いなく良いは良いんだろうけど、良いつっても何がどう良いんだろう、と思いつつ、これまでソニーやキヤノンを使ってきた経験からは、べつに解像度そんなに要らないしなあ、ジャリジャリにはもう飽きたんや、という感じでおったんです。

 つまり事前の感覚では、Z6がZ7に変わったところで、他メーカーのように解像度が上がりました=ジャリジャリっとした感じになって高解像度高精細オラオラ等倍鑑賞しゅごいしゅごい的なものなのかな、と思っていたんですね。

双子のようなZ6とZ7

 このブログにキーワード検索でお越しになった方、Z6とZ7の何が違うのか気になって仕方がない方だろうと思います。私も一緒でした。

 Z6とZ7は一応ご説明すると、双方ともいわゆるフルサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレス一眼のカメラでありまして、Zマウント採用なのでZレンズのとんでもない画質が申し分なく使えます。

 Z6は2500万画素弱の中解像度、Z7は4500万画素くらいの高解像度機。違いはそれだけです。

 私が一番気になったのは、解像度が違うということはセンサーが違うわけで、全く同じ色やトーンのセンサーで解像度だけ違うということはありえない筈なので、その違いがどう出るんだろう? という点。

 つまり、普通のカメラメーカーであればセンサー以外全く一緒というカメラの作り方はそうそうしないと思うんですよ。そこを、2機種比べてみればセンサーの違い「だけ」が味わえるという面白さがあるんですな。ですから最大の関心事はAFどうこうではなく、純粋な画質でありました。

 いちおうメカ的な部分の評価をすると、操作性はまったく一緒。EVFも同じらしいので見え方が微妙に違うのはセンサー由来の違いのみ(意外と見え方が違うといえば違います)、あとはAFの動作する……スピードというのではなくタイミング? の部分でZ6とZ7に微妙な違いを感じますし、シャッター音もなんとなく違います。

 そのあたり全体的になんとなくZ7の方が好きですね。画質をPCの画面に表示して評価する前からこいつはちょっと違うぞ気持ちが良いぞ、と思っておりました。ただまあそのへんは実際に比べて使ってみないとアレな部分なので、ブログ的ではありませんね。

画質の違い

 Z7で撮ってきた写真をPCの画面で表示してみると、「あっ」と脳のどこかで気持ち良いところが刺激されます。

 Z6の時は、「あーちょっと冷たくて硬いんだけど、まあRAW現像でいなしていけば全然使えるじゃん良く出来てるなー」という、言語野でものを考えている感じなんですが、Z7の場合は「あっ」という感じなんですよ。つまり言語的でないところが刺激されます。

 これ仕事のレベルであれば、Z6でもバリバリに戦えるんですね。わたし趣味がRAW現像ですから、他の人が写真を見るときにはかなりZ7に近いレベルまで持っていけると思います。

 しかし開いて一発、撮影者しか見ることができないデータの状態で見た時に、「あっ」と良い意味での言葉にならない簡単が出るというのは、なかなかこれ大したもんだと思いませんかお客さん。

 何が良いって、色が良いんです。

 カメラの画質、といった時、皆さん色んなことを考えると思うんですよ。
 画質っていえば解像度、という人もいると思いますし、色が良くないと、トーンが良くないと、などなど、あれこれ評価がばらけますし、カメラを使う人の目がどれくらい良いかによっても評価が変わってしまうので難しいところと思います。

 今回Z7を使って感心したのは、ソニー製のセンサーを使っているはずのに、ソニー的な絵には全然感じられず、ニコンの技術の皆さんが新しい方向に向かって一歩踏み出した、「この方向で行きます」というのが伝わってくる画質だったことです。

 何より良いな~と思ったのが、解像度よりも色でありました。

 普通は解像度の低いZ6のほうがナチュラルで豊かな色になりそうなもんだと思うのですが、Zについては私感ながらZ7の方が色がナチュラルで扱い易く、両者とも他メーカーと比べると光の条件がよろしくない時のいなしかたが非常に上手いのですが、そのなかでもZ7が抜きん出ていると思いました。

 この3枚、夕暮れ時の難しい光線状態で撮っているのですが、別に難しいRAW現像をしなくてもスルッと良い感じの色、トーンでまとまってくれていて「おや?」という感じ。

 普通はもっと手間がかかるんですよね。変な色かぶりが出たりして、Lightroomでいじりまくっていかないとまともな肌色になってくれないことがほとんどです。

 またZ6と比べると、Z6はもうちょっと硬いんですね。解像方向も色&トーン方向も。Z6IIの記事でも書いたのですが、Z6系はちょっと人工的で冷たい感じになりがち。Z7のほうが、基本的には同じノリなので冷たくなりがちではあるのですが、意外にも高解像度だからといって硬くなるのではなく、むしろたおやかな感じのする画質です。

 わたくしこの色と柔らかさがZ7で独自の表現になっているのに驚かされました。

解像度の解釈・ニコン編

 Z6とZ7、最大の違いは、私の捉え方では前項の色と硬さです。

 高解像度機って、トリミング耐性が高いと言われがちで、それ自体は間違っていないのですが、高画質を目指す考え方としてはちょっと違うよねと言わざるを得ません。トリミングをすれば画質は絶対に落ちますからね。

 また、高解像度機=シャープ! という考え方も、間違っちゃいないしメーカーによっては意図してそういう結びつけ方をしているところも多いなと思うんです。カタログスペックは数字がでかいほどよくわかんない人にも売りつけ易いですから、安易なマーケ担当者がそっちの方向に行きたがるというのはよくあることと思います。

 ところがNikon Z7は、使ってみても「高解像度だなあ!」という感じではないんですよ。

 つまりジャキジャキにエッジを立ててくる画質ではないですし、等倍で見た時にも「うおおお!」っていう感じではありません。ただ淡々と「はい、写りますよ」と当たり前レベルの高さを見せてくれる感じ。

 でも、出てくる絵は他のカメラよりも美しい。これは一体どういうことなんだろうと思いました。

model : さくらこさん
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

 しばらく使ってみて思ったのは、これって高解像度の本来の役割を果たそうとしているんだろうなということ。

 トリミングのための高解像度ではなく、かつジャリジャリのための高解像度ではない。それはつまりトーンのつながりをより滑らかにする高解像度ではないか、ということ。

 たとえば写真の後ろのほうに玉ボケが写っているとしましょう。
 その玉ボケが超低解像度機で捉えられているとしたら、本当は真円に近いかもしれない玉もガクガクに表示されますよね。

 Z7の高解像度は、その逆を表現するために行っているんではないか、と思わせる滑らかな描写をします。深淵をより滑らかに表現するのにも役に立つでしょうし、お肌のグラデーションが明るいところから暗いところへ繋がっていくのも、この高解像度機は役に立ってくれているようです。

model : 凛々奏さん
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

 それが結果としてこの上品なお肌の表現になっているんだなあ、と思うんです。思うんですが……この方向での高解像度機って、ものすごく玄人向けですよね。

 現在の日本カメラ市場では、高解像度機といえばちょっと高いカメラを買っちゃえるカメラ道楽の人がチリチリのものを撮って家で等倍で見て「すげえ~!」って喜ぶもの、というニュアンスが強いので、本当の意味での上品な(だけど地味な)高解像度というのはなかなか理解されにくいんではないかと思います。

 これは使えば分かる、でも使う人の資質によっては分かりにくいって評価されちゃうもったいない画質、ということでもあり、本当にニコンさん心配です。私は全力で支持しますけどね。

最終的に:Z6との比較

 最終的にZ6とZ7を比較したとき、私がどういう評価を下すかというと、仕事の領域であればZ6で全く問題ありません。

 私の場合、人物を撮るのとブツを撮るのが仕事の領域のほとんどでして、高解像度はそうめちゃくちゃ必要なわけでもありません。というかD810が手元にありますしね。あれはあれで良いカメラです。

 Z6も2450万画素ありますし、Zレンズを活かしてぱきっとクリアで透明な表現が出来るのはほとんど同じですから、ポトレ撮りだのスナップ撮りだの、全く問題なく役割を果たしてくれています。

 じゃあそこにZ7を加えるとしたらどういう時かというと、徹底的にトーンと色が美しくあってほしい時、という風に思います。あとはRAW現象で手間がかからないので、トータルで時間を短縮したい時にも強い味方になってくれそうですね。

 Z7とZ7IIでいえば、あれこれ機能強化がされていてより使いやすいのはZ7IIのはずですから、いま買うならZ7IIですね。お値段が40万円を切ってきたのも、内容を知っている人間からすると安い!

 ニコンのカメラ、あれこれ使ってみた結果、パッと見た感じのお値段はちょいちょい高めに見えるんですが、あれ高く見えるだけで、実質は横並びの他メーカーの製品より良い部材を使っているので、撮影体験としてはより確実で気持ちが良いんですよ。

 というようなことを言っていると私もいわゆるニコ爺のように見えるかもしれませんが、まだニコン歴は1年もありません。

Z7で撮った写真

 というわけで、Z6IIに続き、Z7もニコンさんからお借りしたものを試用させていただいて、製品を通じてニコンさんが写真に対して考えていることがよく伝わってきました。

 次にボデーを買う時はZ7IIになると思います。

 それではまた!


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