前回からの続きです。バイオリン弾き小夜子さんへのインタビュー。
本編です。
伴:いまイギリスの皇太子、チャールズの倅…2人いてメーガンと結婚した方、ハリー皇太子が、俺たちは皇室から出て好きにやるんだって言ってながら皇室の名前を使って、好き放題やってイギリス国民めっちゃ怒ってるらしいんだけど。
ニュースのタイトル見たら、税金がいくら、税金がこれにいくらこれにいくらって金額ベースなんですよ。税金をいくら投入したかっていうのをベースに「めっちゃムカつく」っていう角度から批判されているのが……
やっぱり日本だと金額ベースでも何百億円とピンとこない金額ばっかりだし、ほぼサラリーマンは、ほぼじゃないけど6割くらいかなサラリーマンていうのは、自分で確定申告して納税してない、自分の身銭切って納税してないから、どうも税金の感覚がピンとこないっていうか、日本人は税金甘いって言われてて。
小夜子:ものすごい額払ってますよね、サラリーマンって。だって源泉で全部持っていかれるから。でも確かにそうですよね、手取りが自分のところに結果として入ってくるだけで。
伴:数字を見てもね。
小夜子:働く、入ってくる、くらいしかその過程が全くのブラックボックス。
伴:一度50万円もらってその中から20何万円とか払ってたら、だいぶ税金の使い方に敏感になってイライラくると思うんですよ、ふざけんなって。こいつに年間3000万かとかって国会議員にむかつくと思うんですけど、そうじゃないんですよね、手取りで考えちゃうから。
僕はサラリーマンを一瞬だけやった時に、全然仕事できない人とか正直いるんですよ。おっきな会社でそういうのも込みで、みんなで頑張って行こうぜ、そいつもいつか役に立つかもしれないって、ほんとに役に立つ日が来たりするんですよそういう人って。
素晴らしいことだと思うし、人間が集団で仕事をする意味ってそこにあるじゃないですか。社会全体でみたら、体に障害があるとか、そういう人も大体がなんかの役に立ちたいと思ってますよ。お互いにそれで今無理だったら、俺今頑張れるから稼ぐから、みんなでやってこうぜっていうのが当たり前だけど、ちっちゃなコミュニティで社員が数名とか10数名20数名とかしかいないと、働かないやつはマジで殺意が湧くんですよ。僕、入社してすぐにエースになっちゃったんで。結構稼ぎ頭だったんですよ。
小夜子:すごい。なんの仕事…
伴:写真会社。
小夜子:写真会社か…
伴:僕が一番本数撮ってたんですよ。どう見ても僕が一番稼いでるでしょ。あいつ働いてないけど、どういうことなんだろうってだんだんイライラしてくるんですよ。狭量な話ではあるんですけどね。
小夜子:それはそうですよね。
伴:だったら俺フリーランスになっちゃおうって思って。自分が怪我して、来月野垂れ死にして首くくるのは、それはしょうがねえやって思えたんで。
小夜子:性格でしょうね。絶対フリーランスがいいとも、絶対会社員がいいとも思わないけど、性格によって、すごく堅実で割と心配性でっていう人だったら、フリーランスやってたら胃に毎日穴が開いちゃうと思うので。
伴:だと思う。あと僕、このスタジオに毎日12時間くらいいるんですけど、その話をすると「通えない」って言う人がよくいるんです。家で遊んでてもいいわけだし、プレステ4でゾンビ殺しててもいいわけでしょ。それをわざわざ毎日ここに来てちゃんと定時的に入るのができないって言われるんですよ。
僕の場合は、今やってる作業が明日お金になるわけじゃないけど、来年再来年に効いてくるんでやるしかないんですよ。嫌でもやるしかないと思ってやってるんだけど。それが会社員が規定されるから上司にやれって言われるからやりやすいっていう人もいて。
小夜子:好きなこと、興味があることだから出来るってのはある気がします。
伴:あるある。
小夜子:会社に行ってた時と同じ内容を今フリーランスでやれって言われたら、やんないです。
伴:給料よくてもちょっとね、ものすごく給料よくても。
小夜子:たぶんずーっとネットサーフィンしてます。だって誰も見てないし、やれよって誰かに怒られたりとか、あれまだなの?っていう人もいないし。好きなことではあるので。
怠ける日もありますけど、今日はなんもできなかったな、みたいな日もあるけど、ずっとそうではなく、ある程度のペースでちゃんとやっていけてるのは興味があることだからかな。
伴:楽器弾く人って結構強迫観念がありません?弾かないとダメになるっていう。
小夜子:でも練習嫌いなんですよね。バイオリンという楽器の特性かもしれないんですけど、誰かとやるのは好きなんです。ライブとかセッションとか、人とやるのは好きなんだけど、家で一人で黙々練習してて楽しいかと言うと、楽しくはない…けどやんないとまずいという何かでやってる感じです。
伴:クラシックの人とかってリサイタルがありますってなると、何曲分全部きっちり、ノーミスどころかちゃんといいを演奏しなきゃ、っていうのはすごく追い込まれるでしょうね。自分で決めといてなんですけど。
小夜子:そうでしょうね。
伴:そこにつながる普段の練習も基礎技能をあげていかないといけない分、強迫観念で弾いてる部分が大きいだろうし。
小夜子:けっして家での日々の練習は楽しくはないです。
伴:目的が明確だとまだやりやすいかな、と思う。
小夜子:ライブがあるから、定期的にあるからやってないとやばいから、やる。それはどのジャンルもミュージシャンも一緒でしょうね。
伴:バンドマンはそうでもないですけどね。バンドマンってひどいんですよ。
小夜子:そうなんですか。
伴:バンドマンをやってた時、僕は結構強迫観念タイプで夜中に「練習しなきゃ」って、僕だけ弾けるんですよ。周りのメンバーは、後から考えると、あいつら早めに首切って俺もっと優秀なとこに飛び込めばよかったってくらいで。残念ですけど。
小夜子:本番までに練習しない。
伴:ちょいちょい(しか練習しない)。練習の全然水準が違うし、言い訳として、ヘタウマとかっていう言い訳とか、良いライブに上手い下手は関係がない、とかいろんな言い訳がいっぱいあるんですよ、ロックの世界なんて。
小夜子:なるほど。
伴:練習しすぎると確かにフュージョンなっちゃったりするんで、ちょっと違うのは確かなんですけど。ドリームシアターっていうメタルとプログレを融合させたバンドがあるんですけど、僕からするとあれはメタルではないっていう解釈になる。
小夜子:メタルの人からすると違うんだ。
伴:いろんな人がいますからね。ベビーメタルがメタルかどうかみたいな問題で、メタルとしてどうかっていうのが問題なんで。パンクと一緒です。
小夜子:確かにあるな。その人の定義によりますからね。
クラシックの人のところに行くと「ジャズの人」って言われて、ジャズの人たちのところに行くと「クラシックの人」って言われます。
伴:クラシックの人たちってクラシックじゃないものを…
小夜子:全てジャズだと思ってる節がある。
伴:でしょ。テンションがどうとか関係なく「ジャズの人」っていう化外の地みたいなそういう扱いでしょ? すごいわかる。
クラシックの人、一時よく撮ったんですよ。
小夜子:そうなんですか?
伴:話を聞いてると、ピアノの人がジャズっぽいことをやってジャズバーなんかで日銭を稼いだりするんですね、多分実家はお金持ちなんだけど。
ジャズっぽいっていうけど、めっちゃクラシックなんですよ。テンションはジャスなんだけど、めっちゃクラシックの人のジャズだーっていう。
小夜子:わかりますよね。きっとその差って、普段音楽を聴かない人からすると微々たるものだから、おんなじに聞こえるんだろうなとは思いますけど。ジャズのテンションが入っていれば、きっとジャズに聞こえる…
伴:ジャズかどうかって、ヤンキーかどうかですからね。悪いやつかどうかだと思うんで結局は。
小夜子:ノリ、みたいなものが大きいかもしれないですね。
伴:だと思いますよ。メタルかどうかも一緒で、社会に対する怒りがあるかどうかです。
小夜子:精神性の問題。
伴:と思いますね、最終的に。
ビジュアル系のバンドの人が機材だけメタルバンドみたいな機材を使ったりするんですけど、メタルじゃないな〜って思いながらいつも思いますね。メサ・ブギー・トライアクシスとかね。知ってます? トライアクシス。
小夜子:トライアクシス?
伴:メタリカの人が使っていたプリアンプがありまして、プリアンプだけで30万くらいするんですよ。
小夜子:結構しますよね機材って、ちゃんとしたの使うと。
伴:別でパワー・アンプが要るんで、なかなかの出費です。
小夜子:こだわる人って、ギタリストの人ってすごいですよね。アンプヘッドも持ってきて、かつエフェクトボードがみたいな。
伴:繋げば繋ぐほど音が細くなってくんで、途中でルーパーっていう……
小夜子:はい、使ってます。
伴:この時は残響系だからこっちに、ってやりますよね、それで劣化を防ぐ。
僕はギターをずっと弾いてまして、14,5年たった頃にサウンドメイキングが「あっ」てわかった瞬間がきたんです。それでエフェクターをワウ以外全部売り飛ばして、ギターもレスポール以外全部売り飛ばして。結局アンプに直でいいやってところまで原点回帰しちゃって、その後辞めました。
小夜子:辞めたんた。せっかく原点回帰して掴んだのに。
伴:アメリカのビザとれなくて。
小夜子:就労ビザ?
伴:そう。移住できなければ、もう日本でやるしかないから俺無理って辞めたんですよ。
小夜子:日本は合わない…
伴:合わない。ドラマーがいない。
小夜子:自分の目指すところの…向こうのうまい人って音が違いますよね、日本の人と。
伴:そうなんですよ。
最後にアメリカ行った時に、サンフランシスコに行った時かな。隣の席に音大の教授のおばちゃんがいて、行く間ずーっと暇だから、片言でごめんねって言いながら、日米の音楽界隈の違いについて話したんですよ。すごく勉強になったんです。
それもあって、日本合ってないわと。日本のミュージシャンの考え方の問題ですよね、たぶん。
面白かったのは、僕は今日も動画を撮ってくれてる宮原氏と一緒にプロジェクトがやりたいと思ってるんだけど、その教授がおっしゃってた…お名前忘れちゃったんだけどその方がおっしゃってた、日本で世界中の人が集まった音大のカンファレンスがあって、それのパーティがあったそうなんですよ。
そこに日本人のカントリーバンドが出て演奏してくれたそうなんだけど、「とっても不思議な感じだったわ」って言ってたの。婉曲表現で。それでもう俺すごいバリバリバリってきて、これは面白いなと。
俺ら日本人がやってるメタルバンドとか、白人の真似でしかないから。
小夜子:そうですね…
伴:今日一本目の収録かな、阿波踊りの人が来てくれて。めっちゃ盛り上がったんだけど、そこでもこの話題になったんです。
日本人が何であるかということの分析が終わってから外国人のやっているようなことをやるとちょっと違うんだろうけど、日本人であることを忘れて白人の真似をしても、どうもこう…
僕は自分の限界をそこで感じられて、余計に日本ではダメだな、もしもビザが取れてるんだったら、日本人として乗り込んで何かができたかもしれないですね。
音楽をやっていると常にありません? ヨーロッパでやっている人たちと日本でやってることは一緒なんだろうか、っていうのは。
小夜子:ありますね…
伴:出てくる音もどうしても空気違うから、違いますしね。
小夜子:持っているものも小さい時から聞いてきているものもきっと違うし…特にわたしは白人とかより、白人黒人の人も思うけど、南米の人とかの、あっちのラテン系のノリがすごいなって思いますけど。
伴:サッカーがうまいブラジルとかの中学生を日本に連れてくると、2,3年でダメになるらしいんですよ。
小夜子:なんでですか?
伴:日本ナイズされるから。私立の有名な学校が引っ張ってきて選手で出すと、バリバリ活躍するんだけど、日本人化していくからダメになっちゃうんだって、逆に。
小夜子:それは精神性とかそういう部分…
伴:その部分ですね、たぶん環境の問題。素晴らしい素質を持っていても。
僕もアメリカ行って、ビザなしだったんで3ヶ月とかだったんですよ。2ヶ月くらい路上でギター弾いてたら、日本帰ってくるとどうしたのってくらい弾けたんですよ。
小夜子:別にだれかに習っていたわけでもなく…
伴:教わったわけでもないですよ。環境。
小夜子:普通に毎日弾いてただけ…日本でも毎日弾いてたわけですよね?
伴:そう。路上でジミヘンとかを弾くと、その辺の奴が、ジミヘンだーってお金持ってきてくれるんです。
そういう環境で現地のミュージシャンたちと一緒にやってると、結構びっくりするくらい良く弾けて…弾けるようになるんですよ。で、帰ってきて半年でそれがダメになったんですよ。自分で、見る見るうちに日本(の感覚)に戻ってきたっていう。で、辞めちゃった。嫌になって辞めたんですよ。この環境じゃ俺ちょっと無理だって…ごめんなさい、日本でやってる人に。
小夜子:日本と海外というのは置いといて、周り…誰とやるかっていうのはすごく大事な気はします。
伴:空気を自分でどう作っていくかっていう…
小夜子:うまい人とやると自分以上の力を発揮できたりすることってある。
伴:スリップストリームですね。
小夜子:で、家に帰って弾くと、あれ?っていうのはあります。
伴:あると思う。それが人によって空気のせいだと思うかもしんないし、人によっては楽器のせいだって思うかもしんないし、いろんな要因でそれを判断するんだけど…できることなら引っ張られる環境にいたいですよね、やっぱり。
小夜子:そうですね。
伴:写真が良かったのは、一人でできるんですよ。
小夜子:なるほど。
伴:誰の力もなく、俺がやるって言ったらそれで済むのがすごい簡単で。
小夜子:一人で完結しますもんね。
伴:人物を撮る時は人物と一緒ににペアでやってくから、一対一でやってくんですけど。それに疲れたら、静物写真を撮ればいい。
小夜子:なるほど、完全に自然対自分。
伴:もちろん風景を撮ってもいいし、もっと抽象的なことやってもいいし。結構逃げ道もいっぱいあるんで。写真に移って良かったなと思うのは、個人プレーだと。バンド(はメンバー)によって左右されちゃうじゃないですか、どうしても。作曲してる時の自由度とバンドにジョインして、いちプレイヤーとしてやってるのと、それぞれ楽しみは違うと思うんですけど。
小夜子:私は割と周りの人から自分にないアイディアとか貰って完成させていったりとか、人が1人替わると、それだけでもバンドの雰囲気変わったりとか。
伴:音も変わっちゃいますよね。
小夜子:それが楽しいです、逆に。
伴:人とやる楽しみはそれはそうですよね、やっぱり。
小夜子:毎回毎回演奏は違うし、今日と同じ演奏は明日絶対できないし、同じメンバーだったとしても。ていうそのライブ感、作った先から消えてっちゃうしみたいな、その感じが割と好きなので、逆に一人でってなると…
伴:三味線独奏みたいな。
小夜子:だってもう自分との戦いじゃないですか。辛くありません?
伴:僕はその方が向いてますね。
小夜子:そうなんだ。
伴:他人に委ねられないかもしれない。
小夜子:なるほど。うまくいってもいかなくても、誰かとやったその化学反応は、私はすごい楽しいと感じるので、自分がこの人とは合わないなって思ってもそれはそれで、経験値としてはいいし、そういうのもありなんだなとか。
伴:アウトプットした時に、誰を対象にアウトプットして、その人にとってどれくらいの評価を目指すのかっていう、またプロになってくると受取手側の問題も出てくるじゃないですか。
音楽の時しんどかったのは、リスナーが信用できなかったんですね、日本の市場が信用できなかったていうのがあって。
俺はこれが素晴らしいと思って演奏しているんだけど、どうもその球を投げてもキャッチしてもらえずにライブハウスの汚い床に、ぼたっと落ちてる感じがしたんですよ。
小夜子:なるほど。それは辛いですね。それは嫌だ。
伴:正直辛かったんですよ、ずーっと。
俺は確信を持って、俺が聞いて育ってきたCDとかライブビデオで見てた、外タレの奴らの「ここだろ」っていうポイントをおさえていたはずが、日本の観客相手だと全然通じなかったんです。
それがアメリカ行ったら「そこ! そこ!」みたいな。わーすごいすごい、伴さんすごい、みたいな感じだったんで、そこで答え合わせができたんですよ。俺間違ってなかったって。満足しちゃったのもあって、辞めたんですけど。
小夜子:行き着くとこまで行っちゃった。
伴:ビザも取れないから、あの美しい市場に俺はチャレンジできない、ダメだこれはダメだっていって辞めちゃったのもあって…すごくわがままなんですけど。
小夜子:なるほどなぁ。幸いに受取手はある程度いてくれて、共感してくれる人もある程度いてっていう環境が周りにあったので…
伴:最高じゃないですか。
小夜子:日々のうまくいくいかない、思った通りになるならないはあるけど。自分も失敗しちゃうこともあるし。でもそれはそれで受け止めて、自分の少しずつの進化を見守ってくれる人がいるので、それはそれとして…
伴:いいですね。
小夜子:環境には本当に恵まれてて。
さっきの、周りで一緒にやってる人が大事っていう話があったんですけど、12歳までちゃんと本気でやってコンクールとか出てましたけど、でも言って12歳じゃないですか、そこからが大事じゃないですか。
なのにそこをやってなくて、かれこれ10年くらい音楽から離れている、しかもやってたのはクラシック、いきなりノンクラシックのジャンルに飛び込む、コードなんてわからない…
伴:コードってあんまり意識しないですもんね、クラシックの人たち。
小夜子:耳では聞いているから、それをおたまじゃくしで全部表現するのか、コードっていうもっと簡易的なもので表現するのかってだけだけど、でも別物に見えるわけじゃないですか。なんもわかんない状態で、でもそんなわたしを拾ってくれて、現場で使ってくれて。で、仕事が目の前にあるから覚えざるを得ないわけですよ、コードわかんないって言ってても。
伴:切替時どうしたんですか? 会社辞めてミュージシャンやる時の。
小夜子:会社員をやりながらミュージシャンやってたんで。
伴:そうかバンドで。
小夜子:それが2年…バンドも最初は社会人バンドだったんですけど、徐々に営業の仕事もらえるようになったりとか、自分でもライブ企画して、ちっちゃいライブハウスでやったりとかを…
伴:全然うまく行ってるじゃないですか。弾けるからですね、それは。
小夜子:いやいやいや。今でこそクラシックとかインストものとかを、その辺のカフェでやるって結構一般的になったと思うんですけど、10年前とかってあんまりバイオリンの人がコンサートホールではなく、ライブハウス、バーみたいなところに行って弾くっていうこと自体も、そこまで今ほど一般的ではなかった。
あとはシンガーソングライターさんとか、メジャー系で莫大な予算がつめてアレンジャーをちゃんと雇って、ちゃんと弦楽四重奏用に玉譜できっちりアレンジをしてっていう人たちはいたけど…そっちじゃなく、予算がつめないからアレンジャーいないシンガーソングライターさんは、譜面がかけない人も当然いるじゃないですか、玉譜っていう意味では。ストリングスのアレンジなんてできないし、みたいな人たちも結構いるんですよね、インディーズだと。
伴:いそうですね。
小夜子:当然そんなめちゃめちゃギャラがいいとかではないけど、場数を踏ませてもらえる環境は探せばあった。単純にバイオリニストって世の中に余ってるんですけど、みんなクラシック界隈のほうしか見てなくて、誰もやってないところがあったので…別に会社員だったから、食べるのに困ってないし、とりあえず最初は何事も経験なので。
これできる? って言われて、やれます! とか言って、やったこともないのに。やれますって貰っちゃったからやるしかない、なんとかアレンジして本番にこぎつける、みたいなのを繰り返してるのが今につながっている感じです。
伴:今はお仕事の配分はどんな感じなんですか? 演奏側と…
小夜子:演奏が7割8割、2割ぐらいレッスン……月によって差はありますけど。それ以外はちょっとあったりなかったりみたいな…ほとんど演奏ですね。
伴:体力的に大変そうですね。
小夜子:確かにそれはありますね、体力勝負なところあります。
幸いにして、社会人になる前に就職活動自分でしたりとか。
伴:会社に入ってから営業力も鍛えられて。
小夜子:アカウント営業だったので、飛び込み! みたいな営業はやったことがなかったですけど、少なくとも何か提案して、とか、自分から動いて何か仕事をもらうっていうことには抵抗がなかったので。
伴:カメラマンってそれがほとんどできないんです。
小夜子:カメラマンさんを募集してる人とか、ネットで探せばいそうじゃないです?
伴:でもそういう募集をしてる案件って、めちゃくちゃ安いんですよ。とても食えるわけがない感じなんです。あることはありますよ。
でも自分からアプローチして、この仕事やりたいからお宅そういう仕事してるから仕事ちょうだい、って言えないんですよやっぱり。やってみりゃいいのにね。
小夜子:あとは自分からライブ企画したりとかね、そういうのをやれば…聞いてくれるお客さんもいそうなもんですけど。
伴:ライブ企画を自分でか…ライブハウスとかに足を運ぶって風習がだいぶ無くなっちゃってるから。
小夜子:そうなんですよね。日本って行く人が本当に限られてますよね。劇場だったりライブハウスだったり、パフォーミングアーツに対して生のものを聞きに行くっていう…なんでなんですかね。海外だと普通じゃないですか。
伴:つまんないから。
小夜子:やってる内容が…なるほどね。
伴:しょっぱいから。一回行ってみるんですよ、一回行って、つまんねえや。二回行ってつまんない。そしたら二度と来ないんですよ。
小夜子:なるほど。
伴:僕、仕事で南フランスのアビニヨンて街に連れて行かれて、演劇祭をやってたんですけど…全然もう…すごいですねっていう感じなんです。
海外が偉いと言うつもりはないんだけど、期待できるところから大きいじゃないですか。これはたぶん面白いなって思わせられる人材がいて、面白いだろうなって思わせる宣伝をきちんとしてて、ちゃんとお客さんも入ってて、まともな批評があって、演劇ってものがちゃんと回ってるなっていう状態だと、お金を払って見に行っても損しないだろうなって思うんですよ。
日本で下北沢の小劇場出てるのを見に行って、僕もちょいちょい見に行きましたよ。ご招待があったりとかして見に行きましたけど…
小夜子:当たり外れはありますけど…
伴:ダンスとかも。バンドも。なんでも楽しめる人だったら僕よかったんでしょうけど…
小夜子:なるほど。
伴:時間損したなって思っちゃうことがほとんどで、つまりたぶんレベル低いんだと思うんですよ。
僕も写真展をやるとしたら、写真展に来る往復と滞在してる時間を絶対損させちゃいけないと思うんだけど。
小夜子:それはそう。
伴:そう思ってる人が、どうもライブハウスとか劇場に出てる人たちとか、例えば5800円とかですよ、演劇で。で、仲間内でチケット買いあってるだけじゃないですか、結局誰々さん見てくれたから俺も見に行かなきゃっていうだけで。純粋なお客さんっていうのが役者についたファンしかいないんですよ、見てると。困ると2.5次元をやるんですよ。業界の事情をよく存じあげてるんで。
小夜子:わかるんですね。
伴:なんでかっていうと一番厳しい判定ですけど、厳しいこと言わなきゃ始まんないんで…つまんないからなんですよ。面白ければ人は来るよっていうところをスタート地点にしないと…逆に甘い事を言ってても巻き返しは図れないだろうなって思って。
小夜子:面白いことやってるなって思っても、宣伝する人がいなくて続かなかったっていうのはあるなって。
伴:あるでしょうね。面白い人ほどさっぱり辞めちゃうんですよ、大概。
思うんですよ、宮原氏と一緒に…今日何回も登場するけど、彼は動画を撮っていて、僕もスチル写真撮ってるでしょ、もっと宣伝をやればええやんお前らっていうのをよく見るんですよ。
僕も元バンドマンだから宣伝興味なかったんですよ。でも素晴らしいこと、面白いことやっているんだから、力貸してやるからどんどん宣伝やれよ、いい写真撮っていい動画撮ってやるから、ってこちらは支援する気があるんだけど、乗らないの。
小夜子:なんでなんでしょうね。
伴:重要性がわからないんでしょうね、たぶんね。
小夜子:人気と実力が比例しないっていうのはすごい感じます。全員が全員つまんないとはわたしは思わないんですけど、日本でやってる人でも。
伴:僕もそうは思わない。
小夜子:ちゃんとすごい人、上手い人がいっぱいいるけど、でもその人たちが人気が必ずしもあるかっていうとそれはNOだとは思ってます。
伴:つまんないやつがちゃんと埋もれて自然淘汰されないシステムというのも…声がでかいやつと正しいこと言う奴は別でしょ?
小夜子:そうですね。
伴:それとおんなじで、声がでかいんだけどつまんない奴はいっぱいいるじゃないですか。それを淘汰するシステムが僕は批評だと思うんですよ。評論が働いてないんですよ、やっぱり。
小夜子:なるほど。
伴:評論家は引っ張り上げる仕事であり、押さえつける仕事であり。
でも「こんなの面白がってるけど、これは評論的には俺は評価できない」って言う勇気がないんですよ、お金もらってるから。評論の仕事も貰えるお金が少ない、仕事として書く場が少ないでしょ。となるとお金くれた人にいいこと言うしかないんで。
小夜子:評論の意味がないですね、宣伝ですねもはや。
伴:提灯持ちでしかないんで。
よく聞く話で、僕も絶対あるなって思ったのが、レコード評論で悪口を書くと直接電話かかってくるっていう。
小夜子:お金つめば載せてもらえるらしいですね、レコード名鑑とかも。ちゃんとお金払えばいい評論を書いて、載っけてもらえる。
伴:かなりまずいですね、それは。それって結局は、ねぇ…
小夜子:それが一般からすると「あの人すごいんだ」になっちゃう。
伴:困った時はすぐにジャニーズをキャスティングするでしょ。
そんな映像作品を見ていて面白いわけがない。映画もそうなんで、僕も実際映画の現場に行って撮影仕事をやってみて、正直ぶっちゃけますけど、これで面白いものができるとは思えんなってシステムだから…失礼な話ですけどね、だから面白い物を作る人にお金が回るようにしないといけないんですが、継続できないんですよ。
継続できないと、優秀だから、僕別のとこでも食ってけるんでって辞めちゃうんですよ。それで業界に人が残らないから、余計に面白いものが作れなくってお金が入ってこなくて、余計に優秀な若手が来てくれなくって、という。映画の業界ってそうなの。
小夜子:そうなんだ。
伴:いま映画の業界…全員じゃないですよ、全員じゃないんだけど。僕がみた現場では、一日20時間労働で日当1万2千円とか1万5千円で働ける、悪い意味で映画が好きな、でも脳がどっか麻痺してるような子たちっていうのしか残らないですよ。不動産屋の営業みたいな感じ。
小夜子:それだと新しい発想とか生まれなそう。
伴:だからジャニーズ出すんですよ、本当に。ジャニーズと吉本なんですよ。
次回3/3に続きます……