越山丸見学


 こんにちは。新潟~金沢と走り抜けた小ツアー、前回は新潟県上越市の高田町でございました。

 翌日目覚めてみると雨でした。

 梅雨明けギリギリのタイミングだったので、ああ梅雨の名残りかしら、と思っているとチェックアウトするころから激しい土砂降りに。

 しかし上越妙高駅前から出発して国道を西の方に走って行くと、すぐに雲が切れてニコンのカメラが得意そうな「どろーん」とした天気になってきました。

 すると、国道の先、右手の方に何やら白くて丸いものが。船です。

越山丸

 なんだかよくわからないが道の駅と合体した公園があるので寄ってみよう、ということで車を駐車場へ。土曜なのに微妙な天気だからでしょうか、人があまりおりません。

 とりあえず船の外側だけでも見られるのかとNikon Z6を持って車を降り、船の外周をパチパチ撮っておりました。

 役目を終えた船というのは、なんとなく物悲しい感じがするのが良いんですよね。やっぱり家屋と同じで、使われている、いないというのでぱっと見た感じから違ってくるんじゃないでしょうか。いつかインドにあるという船の墓場に行ってみたいものです。

 越山丸、案内を見てみますと、

海の資料館・越山丸
旧能生水産高等学校実習船

 この船は、県立海洋高等学校(旧能生水産高等学校)の実習船として昭和55年6月に進水し、今日まで数多くの航海実習の実績を残し活躍した貴重な船です。
 生徒たちは、遥か洋上80日間の「マグロはえ縄」漁業や海洋観測、生物調査などの重要な実習を、主に北洋・インド洋・ハワイ・タヒチ沖で行い、楽しく、苦しく、厳しい航海を体験しました。
(後略)

 とのことでありまして、生物調査と言われると思わずスタートレックを思い出してしまうトレッキーのわたくしであります。

 そうですよね、実際に海に出てみないと分からないことがたくさんありますし、座学で海のことを学んだからといっていきなり就職して大洋に出るっつうのは無理がありそうです。

 友人、知人に何人か元海上自衛官がいるのですが、彼らには兵器の話を聞かせてもらうばかりで、洋上の暮らしがどういうものなのか聞いたことがなかったなあ……軍艦とこういった船ではまたあれこれ違うのでしょうが、その違いも大変気になるところ。素人のイメージではとりあえず装甲とエンジンが違いそうだなという程度の印象しかないのですが、どうなんでしょうね。

 そんなことを考えながら撮っていると、そのタイミングでちょうど係員の方が受付を開始されたようで、中への見学が可能になったようです。

 大人料金200円を払って中に入ってみると、まず通路がひと一人分しかないんですね。これ全長が50mある船らしいんですが、60人乗り組むっていうんですよ。60人がこの鉄の機械の中にみっしりと……って考えると、それだけで自律神経がおかしくなっている私などは「ウッ」とこみ上げるものがあります。

 ベッドも狭い! スペースの関係で仕方がないのでしょうが狭い!

 全長50mもある船とはいえ、乗員60人を運ぶためだけに作られているわけではないですから、60人にどれくらいゆったり寝るスペースを与えるかと、それ以外の機能に割り当てるスペースのバランスになってくるんでしょうね。設計士の方のお話も面白そうです。

 実際、こういう設計ってそのまま人名に関わるわけで、写真を撮ってフラフラしている私みたいな仕事と比べると重みが凄いですよね。写真で人が死ぬことはそうそうないですから、いまいち想像すら出来ません。

 また乗り組んでいる皆さんも、一歩間違えば死がすぐそこにあるわけで、人生観がだいぶ変わってきそうです。宇宙飛行士が地球に帰ってきてから宗教に目覚めやすいというのを聞いたことがあります。

 ある意味、宇宙だろうが南極だろうが大洋だろうが、同じっちゃ同じ、生身で放り出されたら死ぬというのは変わりないわけで、強迫神経症が進んでいくと、「この船の下は巨大な暗黒だ……」という観念にしばられて、恐ろしくていてもたってもいられないと思います。

 ドラマや映画ではそういうパニックを起こした人がいた場合、鎮静剤を打っておとなしくさせるイメージですが、実際はどうだったのかなあ。まずは乗り組んで大丈夫な心身を陸の上で作っておくところから勝負は始まっているのかもしれませんね。あと規律も。

 ブリッジ、やっぱり重みがあって良いですねえ。

 写真を撮っていると、その写真の目的はなんだね君? という問題に直面します。というか、趣味から離れれば離れるほど、目的設定なしにあれこれの選択ができなくなって行きます。

 このポストの写真についでも、フォトジャーナルとして写真を撮って使うのであれば、この感じが良いよなあ、というので方向性を決め、機材を決め、RAW現像の方向性も決めて撮っているんですよね。

 同じことを越山丸に対してもちょっと思いました。恐らくメインの目的は操船だったりの「船に乗ること」であって、漁船や軍艦のように、より先に目的があるわけではない感じ。

 船に詳しい人であれば、この目的ならこの装備がどう、という話もできるのでしょうね。それぞれの世界にオーソリティーがいるのが頼もしいと思います。

 海図を見るランプのシェード部分、良い錆なので思わず寄って撮りました。現役の時代は生徒さんたちに磨かれまくったんでしょうね。

最後に甲板からの眺め。

 私もいつか船に乗って大海原へ……ということは恐らくないと思うのですが、人類史上海運が大きな役割を果たしてきていることは事実ですよね。
 しかし事実でありながら、海の男達と話をすると、陸で暮らしている人間からはあまりに遠い世界に思われている感じが伝わってきて、ああ海の仕事を紹介する記事もいつかやってみたい、という気持ちを新たにしました。

 それではまた。


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