FUJIFILM XF50mm F2 R WR :隠し味の望遠

 以前友人から借りて短期間使ったXF50mm F2 R WRの写真を引っ張り出してみた。微妙に短い中望遠で画角的には慣れなかったが、良いレンズだったと記憶している。

この写真はオフィシャルサイトより拝借

 写りはXF35mm F2 R WRをそのまま少し狭くしたような感じで、特に鋭さも何も感じないのだが端正で丁寧な描写である。円グラフがどれも満遍なくそこそこの数値で、結果として面積が大きくなっているタイプとでもいえば良いだろうか。

 小型軽量であることもこのレンズの長所のひとつで、先すぼまりのスタイルは好みの別れるところかもしれないが、質感はフジのどのカメラと合わせても違和感がなさそうだ。

 撮った写真を振り返ってみると、やはりほんのり望遠であることが効いており、被写体が背景の中でスッと立ったような、周辺情報を少し落としたような撮り方が非常に合う。56mmほど他人事にならない、隠し味のような望遠である。たとえばXF27mm F2.8と、80mmや100mmのような明らかな望遠の間に挟んで使うと、見せるものが明快に切り替えられて気持ちが良さそうだ。



 このXF50mm F2 R WRはすでに手元にないので、何かしらX-M5につけて使う中望遠レンズがほしいと思っているのだが、ちょうど良いものが見当たらない。

 主な用途としては散歩スナップ中に遭遇したネコチャン撮影に使うので、そう激しいボケも凄いAFも要らず、換算90~100mmくらいが理想である。このXF50mm F2 R WRは換算75mm。多少抽象的なスナップを撮るには素晴らしく良い仕事をするが、常滑のネコチャンたちは警戒心が強いので、もう少し望遠が欲しい。

 純正で中望遠域の単焦点レンズといえば、代表的なのはXF56mm F1.2の一群(新型、旧型、旧型の派生アポダイフィルター版)。どれも素晴らしかろうと思うものの大きすぎ重すぎ高すぎで気軽さを削いでしまうし、SIGMAやNIKONの描写に慣れてしまった目には開放の描写の博打度が高そうなので手を出す気になれない。これはXF35mm F1.4 Rも同様だ。

 Xマウントで使えるAFの56mmというと、他にもSigma製Viltrox製、TTArtisan製とあるが、どれもなんとなくピンと来ない。性能が優れているかどうかと合いそうかどうかは別なのである。そういう意味では結局、一番中途半端なXF50mm F2 R WRが焦点距離を除き一番イメージに近い。

 またX-M5をしばらく使って、AFの精度が純正と非純正でけっこう違うので可能な限り純正レンズを、と考えると選択肢はより狭くなり、こうなったらXF60mm F2.4 Rのマクロレンズか、いっそ望遠ズームのXF55-200mmF3.5-4.8 R LM OISにしてしまったほうが良いかもしれない。

 特に望遠ズームは、旅先で寺院のディテールを撮る際にも役立つし、通りを圧縮して独特の絵面にするのも面白い。ネコチャンを撮る際は、明るいレンズで背景をぼかしまくるのも楽しいことは楽しいのだが、ある程度被写界深度がないと毛並みがしっかり写らない面もあり、必ずしも開放F値が小さいから正義というわけでもない。明るいレンズは明るい分よけいにお金を払い、重いのを耐えて持ち運ぶから、絞りを開けて使わないと損に思えて必要以上にぼかしてしまう。

 その点も含め、今回ボディーをX-M5にしたおかげで大型レンズを最初から排除することができているのは良かったと思う。前回はより大きなレンズを使うためにボディーもお付き合いで大型化し、その割にAF性能が上がらないのに疲れてフジをやめてしまったのだ。のんびり行きたいものである。