女性の撮影とセクハラ問題


 最近、どころか恐らく人間が人間を撮ることが始まって以来ずっと、撮影者と被写体の間でのトラブルというのは起き続けています。

 撮影そのものやその後の写真の使用法について「話と違う」ということであれば、お互い事前の確認がしっかりしていなかったのね、で済むことも多いのですが、こと性的なことが絡むと問題は一気に深刻になりますし、その問題が写真の問題なのかそうでないのかという範囲の問題も絡みややこしくなってきます。

 実際、私もプロアマ着衣ヌードさまざまなモデルさんとお会いして話をするたびに、肌率の高い写真を撮りたがるカメラマンがなかなかの率でセクハラ野郎だというのを耳にしています。作品として肌率が高いのを撮っていたりするので、協力してくれるモデルさんたちから余計に耳にしがち。

 恐ろしいのは、プロのカメラマンであってもおかまいなしのセクハラ野郎がかなりの率でいるらしいんです。これはセクハラやろうとして告発されたとしてもプロ生命がいきなり断たれるわけではない(なかった)ということでありまして、より事態が深刻であることを伺わせます。

 実際にグラビアモデルの経験者に聞くと酷いセクハラを受けた実例がボロボロ出てきますし、昭和の時代から肌率の高い撮影では特に、モデルさんに人権がないかのような扱いでした。

 しかし、だからといってそれで良しとするのではなく、令和の時代に合った撮影ルールを作って提示していくべきだと思うんですね。

 セクハラ野郎を野放しにすると、真面目に写真を撮られたいモデルさんやモデルさん志望が参入も定着してくれなくなってしまいますし、私も今年で42歳。娘みたいな年頃のモデルさんたちが危険な目に遭うのは単純に気分が悪いんであります。もし自分の娘や姪だったらと思うと、危険な目に遭わせる奴を野放しにしておきたくありません。

 もちろんどこからがセクハラなのか、モデルさんサイドが告発したからといってそれを丸呑みにして良いのかどうかなどテクニカルな問題はあるのですが、明確なガイドラインが敷けたら良いなというのは、自分が写真を撮るだけでなく教える側でもあるので常日頃考えていることです。

原則

 原則、どんな人間関係であれ、「相手の嫌がることはするな」が原則ですよね。

 それをしても良いのは有事の際の警察や軍、あとは子供の躾くらいのもので、撮影が関わろうが関わらなかろうが相手の嫌がることをしていけません。
 してはいけない、というか、しなきゃ良いじゃんくらいなもので、ものすごく簡単な話なのですが、これが遵守できないのがそもそも異常なんです。

 日本語圏で女性写真の撮り方を教えます、というのを見ていると、「彼氏にしか見せない表情を撮ろう」「被写体に恋をしよう」みたいな、撮影をデートと勘違いしよう運動みたいな教え方をする人をよく見かけるのですが、それを必要以上に素直に受け取って「撮影はデート」と思い込むアホの人がけっこういます。

 相手がカノジョであっても嫌がることはしちゃいけないと思うんですが、そういう人は普段どういう暮らしを送っているんでしょうね。

 私はそういう危険があるので、「被写体はビジネスパートナーと思え」と教えていますし、私の見る限り周りの皆さんはちゃんと敬意を持って被写体に接することが出来ているようです。

早百合さん提案の同意書

 早百合さんというモデルの方が、ご本人も不快&危険な目に遭われた経験から、撮影前に同意書へのサインを頼んではどうか、という風に提案しておいでで、これは確かに一定の効果があると思います。

note : 性的被害の対策などなど

 同意書の内容については完全に同意です。むしろ当たり前のことばかり。

 ただ撮影側からすると、同意書を交わすのであれば「互いに」を原則にしておいた方が双務的になって良いのかなあ……と思ったりしますが、もし互いにリアル連絡先を交換するとなった時には、こちらの手元にモデルさんの住所氏名が残ってしまい、それはそれでリスキーです。ストーカー事案でも発生しようものなら疑われてしまいますからね。

 私の場合は自前のスタジオで撮影することが多いので最初から名前とスタジオ住所はばれてしまっていますし、撮影に彼氏でも旦那でも連れてきてね、といつも言っているくらいなのでぜんぜん平気なのですが、カメラマンサイドだけが一方的に譲る形で常識を作ってしまうのもちょっとなんだな、という気がします。

 まあそれでもOK! という人間だけが撮影するというので結果的にまともな人間だけが残り、ちょうど良いバランスかもしれません。

特徴

 撮影者の側にだけ身元を明らかにすることを求めるのは片務的でちょっとなあ、と前項で書きましたが、考えてみればリスクを負うのは圧倒的にモデルさんサイドです。

 撮影者側のリスクとしては、悪いモデルさんにあたった時に、撮影者が何も悪いことをしていないのに住所や電話番号がさらされちゃう可能性があり、既婚者やなんかの場合はそれで家庭や社会生活が破壊される危険もありますが、身体に危険が及ぶことはそうそうありませんよね。

 そう考えると同意書への住所氏名電話番号記入あたりがベストなのかもしれません。

 実際、セクハラ野郎として裏で名前が回ってきた撮影者の写真を見に行くと、本人がいつでも逃げられるように顔を出さず、氏名ではなくハンドルネームのみの匿名で、タイムラインにはひたすら女性の裸だけが並んでいるようなアカウントが珍しくありません。

 こりゃ実際の社会生活と切り離して好き放題やるためにやってんだろうなあ、という印象を持ちますし、そもそも写真が「女をしばいて気持ち良くなってる」タイプのものであることがほとんど。

 つまり写真を撮るよりも、女性に対して支配的であることを楽しむ、そういう趣味の結果として写真が残っているだけで、写真そのものにはさして興味もないんだろうなというものがほとんどです。

 別に表現をするなら、少なくともセクハラ野郎という噂が流れた人で、写真そのものが上手かったためしがないんですね。

 またそういった人たちは女性の表現が画一的で、「エロくなければ女性の写真として無価値」みたいな価値観に囚われていることが多く、まあ本当にどうしようもねえなと思います。だからそういったどうしようもねえカメラマンを選ばない、呼ばれても応じないのが対策といえば対策。

カメラをセクハラの道具にするんじゃない

対策

 実際にモデルさんが危険な目に遭わないようにするには、どうしたら良いでしょうか?

 個人情報については、例えば第三者機関を設定して、そこが「通常時は秘匿するので双方の住所氏名などクリティカルな情報を保持し、問題があれば開示します」という形にするしかないと思いますが、撮る側も撮られる側も流動性が大きいですし、トラブル時にどちらが悪かったの判断もなかなか難しいので現実的には良くなさそう。

 あとはもう事前にヤバい人間かどうか、撮っている写真とやり取りの感じで判断するしかないかなあ……。

 前項と被りますが、撮る側だからこそ分かるヤバいカメラマンの見分け方は、「顔なし匿名」「写真が画一的」「写っているモデルが人権ない感じ」あたり。

 顔を出さず、匿名アカウントみたいなノリで写真を撮っているのは、まずくなったら即座に逃げられるようにしているわけですし、過去の事例を見てモデルさんたちの表情がいまいち作業的に見えてしまうとしたら、そりゃもう撮影現場がよろしくないということなので、そのあたりで判断するのがベストではないでしょうか。

 ですから逆に、発想としては同意書へのサインを求めるのと同じことなのですが、身元が明らかで写真がまともなカメラマンと撮影をするのがベストではないかなと思います。

 あとはセクハラ野郎の周りには同レベルの輩が集まっているので、一人アウト認定したらその周りのカメラマンも丸ごとスルーしたほうが良いでしょうね。同一視されたくなければ、それなりの発言があるでしょう。

 それから「撮影に同行者を連れていっても良いですか?」で撮影をデートだと思っている人間は脱落しますから、やってみると良いと思います。私の撮影では同行者が来たら容赦なくレフ板を持ってもらったりしていますが、デートのつもりだった場合は嫌がるでしょうね。

 それで撮影したがる人間が減るのだとしたら、むしろ健全化といえるので良いんではないかなと思います。私もネット上を見ているとちょいちょいいらっしゃる、風俗なのか撮影なのか曖昧にしているモデルさんは勘弁願いたいですから。

レピュテーション

 以前から考えていることがありまして、会員制サイトで撮る側撮られる側双方が登録し、UBERやなんかのようにお互いにレピュテーションを付けて判断できるようにするもの。

  • 身元保証されているので互いに安心度が高い
  • なにかやらかした時にダメージがある
  • その会員制サイトで撮影時のガイドラインを明示

 というような感じにすれば幸せになれる人も多いかもしれません。

 実際わたくし、写真を教える側なのですが虎の穴という会員制サイトを運営しているので、やってやれないことはないよねという感じはしますし、撮る側撮られる側双方に利益があるならやっちゃっても良いかなあという気がしています。

 もし私が運営するとしたら、被写体サイドの個人情報を預かるので非常にリスクが高いのですが、双方身元があやふやな状態のリスキーな撮影がどんどん増え、クリティカルな事故や事件が起きるのを待つくらいなら、リスクを一元化してしまい、一元化することで全体のリスクがさらに低下する効果も狙えるのでアリかなという気がします。

 あとは私自身が肌率の高い写真を撮ろうとする際に、「ラブホテルじゃないけど肌率の高い撮影に使えるところ」の不足に頭を悩ませている部分があり、そういう情報も共有しやすいという意味で会員制サイトが良いのかもなあ、という感じがします。

 それではまた。


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