2021年11月・神戸(4)


 前回からの続きです。このツアー内の記事は「2021年11月名古屋神戸和歌山長野ツアー」タグからどうぞ

 兵庫駅近くのビジネスホテルに泊まり、神戸2日目の朝を迎えました。この日はまず丘の方へ向かいます。

 神戸はほとんど撮影仕事でしか来たことがなく、ワークショップをやりに来た時も神戸三宮駅から歩ける範囲で軽くスナップしただけだったので全然土地勘がありませんでしたが、2日かけて自分の足でウロウロしているとさすがにだんだんと街の構成が分かってきます。なるほど海辺のエリアが東西に広がっていて、その北側に繁華街と線路、さらにその北側に山なのねという感じ。地図で見ているだけだと、生来の方向音痴もあって全然ピンと来ないんですよね。

 また観光案内に興味を持たない人間なので、神戸にどういうステキなスポットがあって人が楽しみに来ているのかというのも、今回リサーチをしてみて初めて知ることとなりました。人が何を楽しむのかってけっこうバラバラだと思うのですが、観光案内はほとんどが「見る、食う」に合わせて情報を集めてきますよね。そのあたり最大公約数的といいますか、多くの人がそれを求めにこれまで神戸にやってきたという実績から割り出しているのだろうなあ、と思います。つまり「普通は神戸にそれを楽しみに来る」ということ。

https://www.feel-kobe.jp/

 このサイト内の情報も、歴史を絡めたり文化人にあれこれ書かせたりしていますが、要は「来て見て食って」という話で、なるほど観光というのはそういうものか、少なくとも誘致する側はそのあたりをメインに狙うしかないもんね、と思います。私自身が観光というものを理解していないサイコパスみたいな状態になっているのが特殊というのはわかるのですが、何をどうすれば観光なのか、というのが根本的に理解出来ないんですね。

 たとえば建築が好きだから好きな建築家の作品を見て回る、みたいな軸だと理解できるのですが、土地を目指して観光に行こう、という言い回しになると急に「?」と理解が及ばなくなります。写真を撮るためにどこかに行くのは私にとって普通なのですが、同じ土地で観光をしよう、となると一体何をどうすれば観光を達成したことになるのか、よく分かりません。

 そんなことを考えながら、しかし神戸のステキなところを撮り集めるのが仕事なので、一体どういうところを皆さんステキと思うのかしら……と考えてみたり、クライアント側から「このあたりの写真があると良いね」というサジェスチョンをもらったりして、候補に上がった場所のひとつが北野異人館街でありました。

北野異人館街

 読みやすいような読みにくいような「きたのいじんかんがい」は、神戸のバックサイドに控えている感じで、海の側から行こうとすると恐ろしく急な坂道を登っていくはめになります。

 朝食べたパンを消化するために胃に血液が集まっているところに、撮影たのしい! とハイテンションで坂を登り始めて即座に「うーむ……」と気分が悪くなりまして、まさか神戸で買って食べたパンを神戸の町に戻してしまうわけにもいかず、かといって座って休むような場所もないただの路地裏だったのでそろりそろりと進んで行きました。

 そこでふと視線を感じたので上を見ると。

 上からバッチリ見られておりました。今回のツアー中、唯一の猫ちゃんでした。

 そんな思いまでして坂の一番上にあったうろこの家は開館前で、さらに入り口を掃除していた係員にほうきでゴミを掃きかけられて「これは帰れという神戸式のサイン?」と思いつつ早々に退散しまして、もうちょっと坂を降りたところにある風見鶏の館と萌黄の館というところに外観を撮りに行きました。

 横浜の山の手にある外交官の家は無料ですが、このあたりの洋館はすべて有料のようです。そのあたりは観光資源というものをどう捉えているのか、各市の姿勢が出ていて面白いところですね。私としては有料で構わないと思います。

 また横浜も神戸も、坂のきついところを登ってでも町を見下ろせる場所に異人たちが家を持ったというのが面白い点と思います。神戸のほうが坂がよりきつく、道も路地ばかりで、「そうまでして坂の上がええのか」という気持ちになりました。

 滞在時間はだいたい1時間半くらいだったでしょうか、撮るものは撮れたので、次はまた海に近いところ、旧外国人居留地を目指しました。

神戸旧外国人居留地

 車を停め、前回神戸に来た際にワークショップでうろうろしたあたりからちょっと南側に来ているんだな、というのを意識しつつ、旧居留地を撮り歩いてみると、震災後だからという理由もあるのでしょうか、とにかく区画がビシッと整理されており、見通しの良い町並みに石造りの建物がカチッと収まっていて、東京丸の内のような印象。

 観光案内を見てみると、震災時にはモラエス翁の次に写っている十五番館も倒壊し、その後に再建したものということなので、他の建物も新しいものなのかもしれませんが、何はともあれ神戸の観光名所として「どうですかお客さん!」と稼いでくれる区画なのは間違いなく、紅葉が始まった並木道も実に整然ときれいで、カメラを手にうろついているとこちらが小汚くて申し訳なくなるほどでした。

南京町

 南京町、以前ワークショップで訪れた際は全然認識出来ていなかったのですが、観光案内なんかで見る南京町は十字に伸びるエリアが中華色でギラギラして露店が出ているエリアで、あとはその周りにちょこちょこっと路地がくっついている形の町なんですね。知りませんでした。

 ここはひとつ圧縮しちゃおう、と望遠レンズを取り出して、十字に伸びる南京町のそれぞれの端から撮影しました。

 この時はうっすら曇っていたので、よけいにさらっとした見た目に見えますね。ニコンの色調もそれを後押ししています。

 実際の南京町も、ぎらつく感じがあまりしませんで、さらさらっとして臭いがしない、安全で健康的な観光地、という感じでした。実際は人間社会ですから、裏に入ればあれやこれやあるのでしょうが、少なくとも表面に見えるところにエグみが出てこないのは大したもの。自治体の皆さんの努力の賜物ですね。

 そんなこんなで、前日とこの日の午前中で撮るものを撮り終えてしまえたので、午後からどこか撮りに行こう、ということになりまして神戸撮影は終了!

 この時の撮影は可能な限り晴天で撮りたいものだったので、下手をすると現地で天気待ちをするのも覚悟していたのですが、気合の晴れでさくさくっと撮り終えることができました。ここから迷走しつつ、和歌山と長野に寄って東京へ帰ることになります。

大丸の脇でスナップしつつ車へ戻りました。

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