2021年11月・長野


 1人でうろうろとしてきた2021年11月ツアーも今回で最終回です。

 名古屋神戸和歌山ときて、和歌山のコインランドリーで旅に対するやる気が尽きた、というのが前回のお話でございました。写真を撮る気はあるのだけどコロナ下で何をどう撮って見せれば面白いのかしらー、というのがまとまりませんで、そりゃ廃村廃屋を撮れば問答無用に楽しいんですが、もうちょっとテーマを見いださないといかんわな、というのが頭の中をぐるぐるしておりました。おじさんも迷うんです。

 というわけで和歌山から大阪あたりまで戻り、名神 → 中央道に乗って東京のほうへ移動しつつ、前夜は長野県内の適当なサービスエリアで車中泊しました。

 ロードトリップをブログのネタにするのであれば、こんなふうに泊まったよ、こんな宿だったよ車中泊なら車内はこんな感じで……というところもどんどん撮って使わないといけないのですが、旅先だとスコッと忘れてしまいます。本当に写真を撮ること以外、頭にないんですねえ。

 こういうのは自分大好きな人の方が強いのだろうなと思います。「俺が」何をしているのを見せるぜ、という動機が強く働き、見る人はそれを見て喜ぶのであれば両者とも幸せになれて良いことですよね。
 私の場合は成果物以外には価値がないんじゃない? と、これは理性で感じているよりも識閾下から来るもののようなので、相当意識しないと宿泊関係の情報を仕込むなんていうことは出来ません。宿泊先の選び方が、そもそも「やばくない範囲で一番安いところ」という選び方だったりするのも、興味のなさから来るもの。人間として色々欠けているのは自覚しているのですが、まあ頑張って治すようなものでもなさそうですしね。

撮るものもとりあえず

 そんなわけで長野県内で目を覚ましまして、時間はあるので何を撮ったら良いか分からない時は原点に帰ろう……というか心の赴くままに撮りたいものを探してみよう、というので、真っ先に思いついたのはやはり廃村でした。

 Googleでステキそうな廃村の情報を見つけたので、そこに至る道を探すことに。

廃村入り口近くの史跡

 廃村への入り口はスッと見つかったのですが、地図で確認すると1時間ほど歩くことになりそうで、なんだかやはり気が乗らず、まあうろうろドライブでもしてみるか、と長野県内をドイツでは違法だという無為なドライブをしてみることに。

 下手に考えちゃうモードに入ってしまうと、動機に突き動かされるパワーがなくなってしまいますね。

 俺は一体何を撮れば良いんだろう……というところに囚われてしまって、ちょっと古いステキな町並みをコンビニに寄ったついでに撮ってみても、まるで情熱というものを感じませんでした。

 ただこれはむしろ、普段の私が撮る情熱のみで動いてしまっているので、結果とセットで撮ることを考える良い機会になっているな、とは思います。
 撮る体験のみをダーダーと垂れ流している状態をここ数年続けてきておりまして、請け負いの撮影があるうちは仕事とそれ以外、というので切り分けられていたのですが、最近では請け負いをストップしてしまったので、悪い意味でシームレスになってしまっています。
 仕事の成果物でなければ作品として世に問うものでもない、ただただ日常からこぼれ落ちるようにスナップ写真がどんどん出来てそれに埋もれていくような状態は、さすがに延々と続けちゃいけないなあ、という感じ。個人的には楽しいので死ぬまでこれが続けば良いのですが、向上しようとあがかないと現状維持すらそのうち出来なくなる、というのが世の常ですからね。

 となると、日本国内をうろうろするのは色々機会があって間違いないので、それを活かすべくテーマ設定をして撮っていかないとなあ、という風に考えるのが順当でありまして、そのあたりは別の機会に書くことにいたしましょう。

廃ホテル

 とかなんとか考えながら、走っている通り沿いに廃墟があれば即座にUターンして撮りに行く始末。これはもう写真を撮る人間として、なのか分かりませんが、本能に近いものがあるのかなと思います。

  意味で写真を撮る人の場合、この廃墟にはこういう来歴があって……みたいな部分が気になると思うのですが、純粋に写真の被写体としてしか興味がないので、この廃墟で何がどうだったか、みたいな部分はさして気になりません。ただそこに素晴らしいガリガリがあるだけ。新築や手がちゃんと入っている建物じゃ、ガリガリは生じませんからね。私にとって廃墟・廃村はガリガリの育成地。椎茸の原木みたいなものです。

 かわいこちゃんを撮る時も、ただ目の前にかわいこちゃんがいるのを良い塩梅で写真に撮り、「どうですかお客さん。可愛いでしょう」とイメージを伝えるものであって、別にその子の最寄駅がどこだとか、彼氏いるのかしら……みたいなことは一切興味がありません。実際、仲良くしてもらっているモデルさんたちがどこに住んでいるかは、スタジオに来てくれた際に「遠くなかった? 来てくれてありがとう」と言う為に「どのへんに住んでたっけ?」とぼかして聞くのですが、よほど印象的なところに住んでいるのでもなければ毎回きれいに忘れていますからね。それくらい興味がありません。

 逆にいえばそうした不要なリビドー的なものがあるからこそ、世間の写真は情熱いっぱいなのかなあ、と思ったりもするので、仕事としてかわいこちゃんを可愛く見せる必要が生じるような領域から離れて作品として世に問う写真ほど、自分がこだわっちゃったり気になってしょうがないものを撮っていくべきなのかもしれません。

 働くおっさんたちについては、日本のリアル労働者諸氏に対して「元気を出せ!」と励ます意図がありつつ、自分自身で純粋に見たいし撮りたいので動機があるのですが、そこから離れたところでも何かテーマが生じると良いなあ、と思います。

悩みつつ旅が終わる

 こうしたことを考えたり考えなかったりしながら、悩んだまま1人ツアーを終え、東京の片隅にあるスタジオへ戻って写真の処理に入りました。今回は総ショット数が3000ショット程度だったので作業としてはけっこう早く終えることがてきましたが、やっぱり帰ってきて一週間くらいはスタジオに籠ってパソコン作業ばかりするのもあり、ふわっとした旅感覚のままですね。

 お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。また各地でお会いできそうで出来なかった方も何人かいらっしゃるので、次こそはご一緒したいと思っております。写真講師サイドでもあれこれ企画していくので、タイミングが合えば是非ご参加くださいね。

 それではまた。


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