ピンナップガール撮影をしてみよう:AFE取材記


 アメリカ文化に強く影響を受けている人を取材するAmerica in Far East取材記、今回は番外編的にピンナップガールを撮影してみた。

 ピンナップ写真を撮ってみた、というほうが日本語としては正しいのかもしれないが、撮影に臨んだ私の感覚としては、ピンナップ写真の条件というものがいまいちよく理解できていないので、ピンナップガールを実践している方と一緒に撮影をしてみれば、何かしら達成すべき条件が理解できるのでは? というテストなのである。実に回りくどいがこういう角度からしか世界が理解できないので仕方がない。

 今回、モデルはDodge Challenger ’71モデルのオーナーであり同時にピンナップガール活動をされているあさかさんにinstagramを通じてお願いをし、こちらはこちらでPinterestやGoogle画像検索で「Pinup Girl」「Pinup Photography」などと検索してパターンを見ていくと、古い写真ほどWikipediaのピンナップガールで説明されている原義に近いものが見られるが、モノクロフィルム写真がカラーフィルムになり、デジタルになり、と新しいものになればなるほど当初の目的から外れ、要素が抽出されているように見える。

 つまりピンナップガールはピンナップ写真のモデル、という意味からスタートして、途中で壁にピンで留めて鑑賞するための写真にする目的が失われた後もアイコン的にピンナップガールの概念だけが残り、現代に生きる人々にイメージを焼き付けているのである。

分析

 実際の撮影をするにあたり、メイクや衣装は私の手でどうしようもないので光源をどうしようかと悩んだのだが、古いものはモノクロ写真で、屋外で撮られたものよりも屋内で撮られたものが多い。ということは人工光でライティングしているのである。最近のものは自然光で撮っているものもあればストロボで撮っているものもあるようだが、どうも光が硬い写真が多い。

 これは写真技法を勉強していない人が撮影しているからなのか、気取らないライティングが好まれるのかは分からないが、ひとつ言えるのは、少なくとも私の観測範囲での現代ピンナップ写真というのは、モデルやその装い、ポーズや小物としての車やバイクによって「らしさ」が誘因されているもので、写真技法として確立しているものではないらしいということだ。

 最近、高お肌率の写真をいわゆるグラビア的な手法で撮り貯めているのだが、実は日本のグラビア写真というのは技法がかなり確立されており、ほとんどが自然光で撮られたもので、その光の使い方も明確にパターンがある。カメラ側にもある程度のパターンは見えるが、グラビアといえばこういう光、というのが自然光であってもライティングの側で定義付けられるほどなのだ。

 それと比べるとPinup Photographyというのはライティングやカメラの側では技法が確立しておらず、被写体としてどういう人がどういう状態で写っているかにより依存するものらしいので、撮る側としては取り組み易いといえば取り組み易い。要は好きにやれば良さそうだ。

 あとは車と撮ることになるので、車と人物のバランスを考慮するくらいである。

写真

 フォトエッセイとしてのAmerica in Far Eastは1950年代とカントリーウエスタンという2つのくくりで取材を進めているので、今回あさかさんの車、Dodge Challengerは1971年製でありそのどちらにも属さない。だから番外編扱いなのだが、ご協力いただいて撮影してみたことで勉強になったことは多かった。

 難しかったのは、あさかさんと車の配分をどうするかである。
 最近お肌率の高い人物を撮ることが多く、その際はいかに肌で面積を稼ぐかを考えがちなので、あさかさんを大きく撮り、車の比重を下げてしまいがちになる。しかし車も大事な要素なのである程度写っていてほしいし、画角やカメラ位置を変えた際、人物単体であればそちらだけ気にしていれば良いのだが、車も良い形で写しつつあさかさんも良い感じに撮らなければならず、さらに背景も同時にコントロールしなければ、と難易度が高い。

オーナー

 あさかさんはこのDodge Challengerのオーナーなのだが、車やバイクと一緒に写るピンナップガールたちは、その車やバイクのオーナーではない、という扱いのものが多いように見受けられる。つまりピンナップガールたちはオーナーである男性のかわいいカノジョ、と写真の上で見えることが多いのだ。そこをどう処理するかも今回ちょっと悩んだところだった。

 これはジェンダー論に足を踏み込む面倒な問題だが、幸いなことに画像検索した範囲でも、必ずしもカノジョとしてのピンナップガールだけでなく、ガレージで自ら整備するちょっとセクシーな格好の女性、という定型の写真がけっこうあった。

 あとはピンナップガールといえばセクシー度をどれくらいにするかの問題であり、衣装は決まっているのでポージングでどの程度女性性を見せていくかの話だった。そこは相談の上決めているので、結果としての写真で判断してほしい。

 今回、撮影を通じて新たに学ぶことがたくさんあり、また実際に撮影しながらあさかさんに教わったことも多かった。撮ってみないと分からないものである。また是非撮影してピンナップガールのイメージをより具体的にしたいと思う。

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