こんにちは。
人と写真を撮っているとちょいちょいある問題のひとつに、被写体さんサイドで写真を改変することについて私見を述べたいと思います。
改変
改変といってもいくつかありまして、まず代表的なのがトリミング。写真を切っちゃうやつですね。
撮る側が「この余白も込みでかっちょいい構図にしてあるんや」と思ってスカスカの構図を作ったのに、被写体の人は「余白なんて知らない、あたしを見て」と自分を見せたがり、写真をぶった切り、それがSNSなんかにアップされたのを見て「がっつり切られとるがや!」ということになって驚いたりします。
ここで思うのは、正直なところ写真を撮っている側からすればかなりイラッと来るのですが、相手は別に写真の専門家ではありませんから、話し合って妥協点を探るなり、撮影を今後やめるなりすれば良いと思うんですね。
他にもアプリでお肌すべすべにしたり、宇宙人みたいに顔を変えたりする被写体さんがおりますが、そのあたりまで改変という言葉に含まれるかと思います。
トリミングについては以前Youtubeでお話ししたこともありました。
撮る側の気持ち
撮る側としては、構図も込みで写真なんですよね。
構図を作ることにどれだけ俺たちが心血を注いでいるか! どれだけ高度なスキルが要求されると思ってんだ! って思うわけです。
たとえば構図で写真を見た時に見た人が最初にどこに着目し、それから視線が流れ……というのを作っています。
どう見てもこの写真、花の丸に視線が行きますよね? それは目が行くように構図を作っているからなんです。偶然花がそこに写り込んだわけじゃないんです。
写真を撮る人、これは単にカメラを持ってぱしゃぱしゃやっている人ではなく、注意深く構図を作ることが癖になっている人、構図の重要性に気づいて「上手いことやれば見た人に構図でもメッセージが伝わる」と理解している人は、トリミングによって構図を崩されることで、伝えたかったメッセージが破壊されるのでトリミングを嫌がるのです。
被写体サイド
被写体サイドの気持ちというのは私は撮られることがないので基本的に想像になってしまうのですが、撮られる側の人というのは、撮る側の人間が前述のように「構図ッ!」と気合を入れて構図を作っていることをそもそも知らないことが多いんですね。
ですから、いっぺんトリミングされて「あ、それちょっとやめてくんない」と言わないといけないことがあります。
もちろん初対面で撮影をご一緒して最初から尊重してくれる場合もありますが、それはその人が偶然別の場所で著作者人格権について学ぶ機会があったか、運良くトリミングする必要がなかったということでしょう。
これが例えば宣材写真のように、最初から利便性を求めて撮るものであれば、トリミングされたとしてもどうぞどうぞ、勝手にやってちょうだい、なんですね。少なくとも私の場合は。
宣材写真の場合、背景もへったくれもなく、写った被写体の人が仕事を得たり仕事でこれから出会う人に対して良い印象を与えることが第一の目的で撮る側は裏方すから、広義では写真作品であっても、「俺が撮った」というのを前面に押し出し、自分の名前を広めることが目的ではありません。
しかしそういった宣材写真のような、思い切り利便性のみを目的にしたものでない、もうちょっと構図に意図があるなという写真の場合はトリミングされると「いやあ……意図がある構図だし、君は自分の都合だけで同じ作品に関わった他の人の意図をぶった切るのかい」という気持ちになるんであります。
ただ、被写体の人は被写体の人で、自分が写った写真はすべて自分の作品、という極端な人から、自分が写ったところを都合よく切り出して使うのは利便性のためにOKと思っている人まで色んな人がいます。
そもそも構図が「そういう風に写っちゃった」ではなく、撮る人間が意図を持って作っているということを知らない人もたくさんいます。それ自体を責めるべきではないと思うんですね。
被写体の人は被写体の人で、一緒に写真を作るために働いてくれたわけですから、その人が利を得るのは歓迎です。ですから、お互いにとって良い形を探りましょう、と話し合うのがベストですね。
具体的には、顔アップのが欲しいなら俺が良い感じにトリミングするからちょっと待って、で済む話です。
最終的に
私個人の感覚なのですが、勝手にトリミングされたとしても、それが良ければ「やるじゃん」になるんですね。
ムッとするのは、トリミングすることそのものよりも、ダサいトリミングによって俺がこんな構図で撮るって思われたら嫌だ、という感覚が一番近いと思います。
と同時に、被写体女子がお肌をきれいにしたい、とスマホのアプリでお肌をレタッチしてしまうのも、乙女心がわからないおじさんながら一定の理解はあるんですね。そりゃきれいにしたいよね、という。また俺が全部レタッチしてる暇はないもの、という。
ですからそういった場合は、私が撮ったとクレジットを付けてくれなければ好きにやってね、という形にすることが最近多いんであります。
この改変問題、世界中で起き続けている問題ですし、時代によって改変に使うツールも目的も変わっていくと思いますから、都度話し合い、都度更新していくしかありません。
私の意見も2020年現在のものですから、またこの先、状況の変化により変わるかもしれません。