Contax T2 & RDPIII, フィルムってつぶつぶよね


 「つぶつぶ」というと別にポジティブでもネガティブでもない感じがするのに、「ぶつぶつ」というとなんだか嫌な感じがしませんか? わたくしフィルムをデジタイズする度に「フィルムって粒が集まっているんだなあ……」と当たり前のことながら少し感動します。

実にプロビア色。

 そう、フィルムは粒です。粒子です。

 デジタル写真は四角く区切られた升目を塗り絵していく形でして、解像度を高めていけばいつかはガクガク、ギザギザが見えなくなって美しいカーブが見えてくるよね、という考え方ですから、そもそも粒で表現するフィルム写真とは成り立ちが違うのが面白いんですね。

 私自身はデジタルカメラが実用レベルに入ったな、というあたりでカメラを買い、高画素化の一途を辿るセンサーと一緒に育ってきた感じがありますから、たまにフィルムをやるとその構造の違いに毎度新鮮さを感じます。

パララックスで見事に耳が切れております

 今日の写真は寄贈いただいたContax T2にFuji Provia 100Fを詰めて撮影したものを、Nikon Z7の高画素パワーをフルに活かしてデジタイズしたもの。

 元のフィルムは135フォーマットですから、およそ24*36mmに銀粒子がつぶつぶっと分布しているわけですが、それを4500万画素のセンサーで読み取るという、なんとも暴力的な感じのするシステムでデジタル化しています。デジタイズ用のボデーはNikon Z7、レンズはAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDという長い名前のレンズ。

 35mmフィルムの解像度が一体どれだけあるかというのは様々に議論されているところで、人によっては5000万画素相当の解像度がある、とおっしゃったりもするのですが、私はなんぼなんでもそれは盛り過ぎだろうと思っています。こちらの方と同じように、私も2000万画素には届かないよなあ、という印象。

 4500万画素のデジタルカメラで撮ってだいたい等倍で切り出すとこんな感じで、もう粒が見えているんですよね。

 フィルム写真が面白いのは、リアルの世界であっても、フィルムは拡大率の高いルーペで鑑賞すると、つぶつぶが見えたりします。感度の高いフィルムならなおさら見えます。それが、縮小するとどんどんきれいに見えるようになっていくんですね。

 これは油絵を近くで見たり、富士山を間近で見たりする体験に近いなと思います。

 逆に言えばデジタル写真の場合、拡大しようが縮小しようが得られる感覚にほとんど違いはない気がします。拡大すれば整然と並んだ升目が大きくなり、最後はドット絵のようになるだけで、縮小すれば多少は詰まった感じに見えるのできれいに見えないこともありませんが印象はフィルムほど大きく変わりません。

 写真の印象とプリントサイズ、鑑賞サイズってもともと密接ですから、デジタルであっても鑑賞サイズは大切です。しかしフィルム写真の方がより顕著にそれを感じる気がします。

 なんというか因果が逆転しているような、というほど逆転はしていないのですが、デジタルとフィルムは兄弟というほどは似ていないなという印象です。

 フィルムは時折やると、ベンチマークとして自分の立ち位置が分かるような気がするので、今後も機会あるごとに取り組んでいきたいと思っています。

 ただ皆さんご存知のとおり、フィルムは製造される種類がどんどん減ってしまっており、フジもコダックもいつまで続くのかしら、という状況になっています。最近は写ルンです需要であるとか、新たに写真を撮り始めた若い子たちがフィルムをやりたい、と需要が多少は伸びているようですが、もともと趣味用途で使われるフィルムって恐らく大した量ではないはずです。

 仕事だと1日に何本、何十本と使うのがざらで、下手をするとそれが毎日延々と続くわけですから、かなりの消費量があったと思うのですが、趣味の場合は1日1本でお腹いっぱいだったりしますよね。デジタルとの併用というのも現代に合う形と思います。

 そんな中でフィルムをどれだけ楽しめるかは分かりませんが、歴史だ文化だロマンだという側面をちょっと脇に置くとしても、単純に楽しいですからね。皆さんも機会があれば是非フィルムで撮ってみてください。

 それではまた。


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