仕事場としてのスタジオ話


 今日は写真を撮ったりそれについての文章を書いたり動画を作ったり、という活動をしている私が、自分の仕事場であるスタジオでやっている業務あれこれについて書くという、恐ろしくニッチなお話です。

 最近急に、年を一つ重ねたせいでしょうか「もっとでかいスタジオが欲しいなあ」「可能なら自前の」と思うようになってきました。現在のスタジオは何へーべーだとか何畳というのは覚えていないのですが、ちょっと変わった形ながら事務所スペース + ちょっとした撮影スペースを同時に設置できる状態にありまして、まずまずの広さです。そこへ毎日通勤しており、現在の私の活動のほとんどがそこで行われています。

 問題というほどの問題もなく、以前は雨漏りがあったりしたのですが、大家さんがすぐに対処してくださいまして、以後何のトラブルもありません。周囲の環境含め大いに快適です。
 入居の前後にはエアコン費用をクラウドファンディングしたところ、凄い勢いで達成して皆さんのご期待に驚くとともに大感謝、ということもありました。

3年前、入居前の状態。なんでビデオカメラを持って内見に行ったのか記憶がありません。

当初の目論見

 現在私がスタジオとして借りている物件はもともと学習塾だったようで、なるほどちょっと変な間取りながら塾みたいな用途なら使いやすいかもなあ、という感じです。L字型なんです。トイレあり風呂なし。

 その物件を見て私が入居を決めた理由がいくつかありまして、一番の理由は私の用途に合致しており、かつ家賃が安かったこと。

 カメラマンがスタジオを作るよ、と言った場合、普通はスタジオで撮影をしてお金を稼ぐんだろうな、と思われるはず。私の場合も実際に、周囲の人たちからよく「スタジオで撮影仕事をするために作るんでしょ?」と聞かれました。商業写真というジャンルをご存じない人からは写真館をやると思われていたりしたようです。

 しかし私の目論見としては、

  • 事務仕事をする事務所機能
  • 写真を教えるための道場機能
  • YouTubeやVimeoの動画を作る動画スタジオ機能

 これらの3つをメインの目的として設定しておりまして、写真仕事を請け負うためのスタジオ、という感じではありませんでした。現在もその設定のまま運営を続けています。
 写真でも動画でも、思いついた時にスッと撮影に入れるスペースが欲しかった、というのが最大の動機なので、外から仕事を招き入れるためというより、自らの情報を形にする場所という、人によってはアトリエと呼びそうなニュアンスで捉えています。

 クライアント立ち会い前提の商業スタジオや一見のお客さんが飛び込みでやってくる営業写真スタジオではないので私物がごちゃごちゃと増えて雑然としておりますが、生徒さんたちに対しては写真道場だから良いの! ドンキみたいなもんで色んな機材がゴロゴロ出てきて楽しいでしょ! と思っています。

 スタジオレンタルはレンタルスペースと事務スペースを完全に分けないといけないし機材も自前機材とレンタル用機材を分けるのが面倒、などなどの理由でやっていません。ごく稀に、オンラインサロンの生徒さんにスタジオを貸すこともあるのですが、それはサロン内での動画教材になる場合のみよ、と限定してあります。

現在の仕事

 おそらくYouTube越しに私のことをご存知の方からすると、私がどうやって食っているのか不思議でしょうがないだろうと思いますが、別に親の遺産で食っていたり嫁さんがバリバリ稼いでいるということもなく、オンラインサロンを運営し、写真を撮ってPatreonに流し、YouTubeや、たまにVimeo向けに動画を作って流し、というのがマネタイズ三兄弟で、そこで食わせてもらっています。

 ですから収入に応じた肩書としては「写真講師」が筆頭に来て、次にPatreonで写真そのものをマネタイズしているので「写真家」ということになるでしょう。その次に「カメラマン」ですね。
 ライターとしてはカメラ関連で書籍の執筆をやった業務実績がいくつかありますが、このジャーナルブログについてはマネタイズがほぼ出来ていないので開店休業中といったところ。

 元々はカメラマン業が稼ぎの100%だったのですが、そこへカメラ系のライター仕事を請け負うようになったり、雇われ講師をやったりと教える側の仕事の比率がどんどん高くなり、2020~2021年は上記のような形になっています。

 現在、依頼撮影については、オンラインサロンを始めたのがコロナ禍に入るちょっと前だったでしょうか、ちょうどそのタイミングで依頼を請けるのをほぼやめてしまいました。現在、依頼で撮るのは個人的に仲良くしていただいている方からのイベント撮影依頼が年に2回くらいかな? あとは稀に商品撮りの依頼が来るくらいです。

 写真を教える場としてのレッスンやワークショップも、コロナ禍で多数が集まるのを避けるとなると開催が非常に厳しく、かつオンラインでレッスンというのも写真教育にはあまり馴染まないよなあ、というので、最近まで全く開催しておりませんでした。お休み期間は2年にも及びます。

 そういえば名古屋で人物撮りワークショップをやるか! と意気込んでいたのに、開催直前になって緊急事態宣言入り、ということもありました。もちろん流会。単に仕事が成立しなくて残念だ、というだけでなく、ワークショップはYouTubeで私の教えるスタイルを知って興味を持ってくれた方とリアルでお会いする機会なので、新たな出会いがなくなったことが何より残念です。

 最近はじわじわワークショップを再開しておりまして、やっぱり生徒さんとリアルで会えるのは良いものだなと痛感しているところです。

 そんなこんなで当初想定していたスタジオ用途から外れることなく、かつ家賃が払えず追い出されることもなく、入居してからひっそりと穏やかに3年が経過しました。

撮影スペースが広くないのでこういうポーズだとギリッギリ! @salztokyo

スタジオに求めるもの

 今年、2021年の後半から、微妙な筋トレが功を奏したのか、コロナ禍も2年目が終わろうとして神経が鈍くなってきたのか、ぼちぼち経済活動を活発化させないとなあ、という気持ちになってきまして、2022年はより表に出る活動を増やさないといかんな、せめてコロナ前程度に戻すのを目標にせんとな、と思っています。

 そうやって脳内が経済発展路線に切り替わったおかげか、スタジオももっと広いところだとあれこれ楽だよなあ……という気持ちに(あくまで気持ちだけ)なっています。

 写真を撮る際って意外なほどスペースに対する要求水準が高く、普通のテナントでは必要ないレベルで高さが欲しかったり、広さについても、いつでも撮影に使える(つまり他のもので専有されていない空っぽの)スペースを可能な限り大きく用意しておく必要があり、俺は空気を蓄えるために家賃を払っているのか! という気持ちになったりします。

 そしてより広いということはおそらくより家賃が高かったり、購入や建造ということになれば普通に考えてローンがのしかかってくるわけでして、そうまでして作ったスタジオであれば、スタジオでガツガツ稼いで運営しないといけません。

 となると、スタジオでやる撮影で単価が高いものを請けるのが一番早いわけで、じゃあ商業撮影をバリバリ営業して取ってくるのがベスト? という話になりますが、いやいや今更商業カメラマンがメインでやりたいわけじゃありませんし、このブログを見てスタジオ撮影を依頼しようと思う人はほとんどいないでしょう。方向性としては「うちのカッコ良い職人のおじさんを撮って欲しい」という方向になるでしょうし、そうすると現地で撮るのがほとんどでしょうから、スタジオは要らないんですね。

 つまりこのブログをメインの活動に据えるとなると、スタジオの用途としては事務所と写真道場がほとんどなのに、スタジオ撮影で稼ぐわけではなく……大きなスタジオが欲しいというのは本末転倒になりそうです。

 もちろんスタジオが大きくなれば道場としても一度にたくさんの生徒さんを受け入れることが出来ますし、そちらはそちらで夢が広がるところがあるのも確かですが、ただスタジオを広くしたから儲かるというわけでもありません。YouTubeの宣伝効果を使わせてもらっているのでワークショップの集客は比較的苦労していないほうだと思うのですが、とはいえ私がもっと有名にならないと生徒さんが爆増! ということはありませんからね。集客力とハコのキャパシティが見合っているという点でも現在のスタジオとの相性はバッチリです。

 またレンタルスタジオをやろうとしたら、スタジオをレンタルしている間は私は撮れません。であれば誰か時給の安い人にスタッフをお願いして、その間私はより稼げる仕事をしよう、なんていうことになるかもしれませんよね。それでスタジオを持っている意味があるんだろうか……? と思うんです。またレンタルスタジオとして単価を上げようとすると、こちらも商業撮影用途にするのが一番早いですから、それなりの立地、設備が求められて割に合わないなあ、という感じ。

 実際、知り合いのカメラマンに、自分が作ったスタジオの家賃を払うために外部に働きに出て、はたと「俺はアホか?」と気づいてスタジオをやめて野良カメラマンに戻ったという方がおりまして、下手をすると私もその轍を踏みかねません。レンタルスタジオは待ちの仕事なので、いつお客さんが借りたいとやってきてくれるか分かりませんし、宣伝を頑張らないと認知されませんしね。そういったややこしさが商売を複雑にし、手数を増やしてしまうのも嬉しくありません。

 こういったことを考えて詰めて行くと、結局は現在の活動スタイルに合っている現在のスタジオが一番で、大人数で何かをしたり、大規模な撮影をするためにどうこう、というのであれば、都度場所を借りてしまったほうがローコストで済むよね、という結論に達しました。

 オンラインサロンではコロナが明けたら、ちょっとした田舎に集まって、そこで部屋を借りておいて何か学びたい人は学び、そのへんでスナップしたい人はして、夜はパソコンを持ち寄ってRAW現像しながらズルズルと食ったり飲んだり、みたいのが楽しそうだよね、と夢想していたりします。

金が余ればやろう

 このジャーナルブログにどさどさ人が遊びに来てくれて、企業がこぞって広告を出したい! という状態になれば、そこで得たお金で無駄に広いスタジオを作ってしまうのもアリですね。

 ブログの主旨としてあちこちに取材に出るのは国内でも国外でも間違いないので、そのあたりをサポートしてくれるアシスタントが欲しくなるでしょうし、人数が増えてくると現在のスタジオでは手狭になるでしょうから、上手く発展していけばそのうち勝手に広がるものと思います。

 2022年は「表に出る」というのを目標に掲げて動くので、スタジオの中からも外からも情報を発信していく所存です。お付き合いいただければ幸いです。


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