こんにちは。今日はしとしと雨が降る梅雨らしい天気です。
先日、YouTubeのコメントで「プロのカメラマンになろうって人が買うべきカメラ」という数年前に私が作った動画の2022年版を作って欲しい、という要望がありまして、なるほど状況は変わっているからやるべきかもしんない、とまたダラダラしゃべくるだけの動画を作りました。今日はその補足をちょこっとしようと思います。
ばらばら
動画の中でもお話しているのですが、まず前提として、プロのカメラマンといっても領域が広いので、私が対象としているのは私と同じような経歴をたどることになりそうな、営業写真~商業写真の、とりあえず何でも撮るタイプの汎用プロカメラマンです。1年中ネジしか撮らないとか1年中複写しかしないみたいな特殊領域は省いています。
そしてギャラが安くてたくさんある取材撮影みたいな仕事ほど雑多にあれこれ撮るので、余計に尖った機材が要りません。標準ズーム一本でさまざまな被写体を良い感じに撮れるかどうか、というのが一番大事なんじゃないかなあ。そういう方面でVimeo動画を作ったら面白そうですね。狭いところ、人物写真、静物などなど、標準ズーム一本で良い感じにする勝負。
実際、プロのカメラマンに求められるのって出たとこ勝負でなんとかする能力であって、これしか撮りません、こうしか撮れませんみたいに思い切りジャンル限定でやるカメラマンって、よほど経歴が良くてコネが強力な人か、自称プロだけど実際は実家に食わせてもらっているような人しか見当たりません。大なり小なり、クライアント側というか現場の無理に合わせて撮るのが仕事です。
その際、限定的な機材を使っていると、機材の特性にぴたっとはまったときには素晴らしい写真が撮れるのかもしれませんが、平均点が下がってしまうので基本的にそういう人は食っていけません。クライアント側から見たら、こだわりが強い割に写真の上がりが良くない人でしかないからです。
卑近な例で挙げるなら、マクロレンズは要るのか? 要らないのか? みたいな問題です。
マクロレンズは私の経験上、意外にもそんなに使いません。食べ物や商品など静物写真撮影もちょいちょいやるのですが、好きでマクロレンズを持ち出すことはあっても、マクロレンズでないとこの仕事は成立しない、みたいなことはあまりないのです。
たとえばこの写真、どれがマクロレンズで撮ったもので、どれがマクロレンズでない普通のレンズで撮ったものか、見分けがつくでしょうか? 3本とも違うレンズでたわむれに撮ったものなのですが、まあさしたる違いはありません。仕事にするということは結果側から写真を見る必要があります。
静物を専門に撮る人については、マクロレンズを持っているかどうかよりもシフトレンズが使いこなせるかどうかの方が重要なんじゃないかなあ。
ボケの扱い
あとはボケの問題もプロ・アマの境界で全然違うなという印象で、アマ側はボケの絶対量みたいなものを気にする人が多いのですが、仕事として撮る場合はボケの絶対量ではなく、人物とそれ以外の対比で、どれだけ人物と背景に親和性があるように見せるのか、それともそうでないのかのバランスのほうが大事です。
要はあまりにボケていると、その場所でわざわざ撮影する意味がなくなってしまうんです。やったー! ボケたー! と喜ぶ気持ちは私もよくわかりますし、Sigmaの135mm F1.8で嘘みたいに背景と分離するのが楽しいのもわかりますが、仕事として捉えるとボケてりゃ良いってもんじゃねえんだよ関係性が見えねえだろボケカス、という話になってしまいかねないんですね。
これって結局、大事なのは画角の使いこなしであって持っている機材の量ではありません。たしかに中判デジタルみたいに、その機材を持っているから依頼が発生するみたいなものもありますが、駆け出しペーペーカメラマンのところにA4を超える印刷サイズの仕事ってそうそう来ないですから、実際は1000万画素程度で十分です。
大事なのはその1000万画素の写真の中身をどう組成するかの技術のほうなので、初手から機材にこだわる必要はありませんよ、というので結論として「フルサイズ2台に、まあ大三元じゃないの」という結論にしてあります。
その先
本当に大事なのはその基本セットで仕事を始め、カメラもレンズもやれて何度もメンテに出すくらい使い込んだ先に開ける各自の専門領域への扉に到達出来るかどうかです。一通りあれこれやっているうちに「自分にはこれが向いているんだな」というのが分かってきますから、そういう意味でも余計に平均的な機材を持っていることが大事なんじゃないでしょうか。
とりあえず量産型カメラマンとしての仕事がちゃんと出来ずに専門家を気取っても仕事が出来ないんじゃしょうがないでしょ。
というわけで、大事なのは技術、技量なのに機材の話をしてしまうと、フルサイズ2台に大三元レンズを持っているからプロ並み! みたいなおかしな人を生んでしまうのであまりよろしくないのは重々承知ながら、実際にこれからカメラマンとして活動を開始したい人に対して、飽くまで私見ではありますが機材論でございました。
ちなみにこれが「作品を撮る機材」という話になると、これまでのテキストが一切パーになる勢いで何でも良くなります。ピンホールカメラだろうがなんだろうがアリです。
というわけでまた。