Ponjee (ぽんぢぃ) 宇和島取材2022・その2


 宇和島取材2022、2件めに伺ったのは、E56高知自動車道がすぐ脇を通る『Ponjee』さんです。日本語表記では「ぽんぢぃ」。

 宇和島には5日滞在して、その間ほぼずっと宇和島市内をぐるぐる回っていたので、なかなかの方向音痴ながらだいぶ地理に詳しくなりました。宇和島の市街地は駅から南西の方角に広がっている形で、聞くところによるとかなりの面積が埋立地だそうです。

 今回伺ったPonjeeさんも恐らく数十年前に埋め立てられた土地に建っているんだろうなあ……と思って検索してみたら、こちらのサイトで詳細に埋め立ての歴史を教えてくれています。

 埋め立ての歴史はさておき、Ponjeeさんではインスタなんかを拝見してもわかる通り、飲食からおむつケーキまであらゆるものを扱われているのですが、その中からネイルサロンとしての側面を取材させて頂くことになりました。手を使う職種どころか手を対象にする職種、そう多くはありません。写真に撮らせてもらうと映えそうです。

 私としげさんが訪問すると、お店の奥へ通して頂きまして、そこではすでにネイル作業が着々と進行中でありました。

 ネイル。野郎どもにはまずご縁のない、そういえば指の先にたんぱく質の塊が付いとるわ、という程度の扱いのものですが、大多数の女性たちにとっては一大事です。私もその程度の知識はこの社会に生きる人間として一応持ち合わせているのですが、なんと言いますかやはり秘密の園的な感じはありますね。

 職業カメラマンとしては、ネイル関係とエステ関係は女性客のみを対象にしているお店が多いので、女性カメラマンの方が入り込みやすい領域と言われています。

 それでも取材撮影であちこち行っていた際は、写真を記事の一部として掲載する媒体に指示されるままにあちこち訪問して撮っていたもので、ネイルサロンにお邪魔して撮ることが稀にありました。あれは一体どこの媒体に使う撮影だったのか、今となっては記憶も曖昧ですが、撮影を始めるとネイルサロン撮りのコツみたいなものはスッと思い出すから面白いものです。

ネイル技術

 実際のネイル作業を見せて頂きながら話を伺うのですが、面白いことにネイルの世界すなわち女性の世界で使われる用語で教えてもらっても、おっさん脳の私には即座におっさん世界の用語に変換されて記憶してしまいます。

塗ってらっしゃいます。

 たとえばPonjeeさんではネイルを七層に塗って……みたいな話も、恐らくもっとスムーズで耳あたりの良い言葉で伺っているはずなんですが、私の脳内では「そうか多層コーティングなんだな!」という風に変換されて格納されています。

 たとえばこのマシン、お客さんの古いネイルを削り取る装置と、その際に削った粉が周りに飛び散らないようにする装置なのですが、おっさん脳では「斫り(はつり)と集塵だな」ということになります。

 事実としてはまあその通りなのでしょうが、女性向けサービスやグッズの場合はそういう名前だとアレなんでしょうね。そのあたりの感性の違いが面白いなあ、と勝手に感心しておりました。

 逆にいえば、道具の呼び名が少々違っても美意識に基づいて仕事をしているのは男女関係なく一緒。眼の前のお客さんを喜ばせること、技術を達成することに人生の大きな部分を注ぎ込む生き方という意味でも一緒だろうと思います。

この目は職人の目そのものですよ。

 そんなこんなで私が横から茶々を入れさせてもらいながらも作業は粛々と進み、塗ったり固めたり削ったりを繰り返し、けっこうごつめの石を薬指に載せていきます。

 ここでも面白かったのは、石を一つだけ載せていると尖った形になり、日常生活に支障を来したり、強度が保てなかったりするので、複数の石をくっつけて丸い形にし、かつ隙間をみっちり埋めた上で紫外線照射して固めているんですよね。

紫外線照射! ウルトラバイオレットの光。

 そう、おっさんたちにはあまり縁のない話なので知らない人も多いと思うのですが、つるっとして立体的なジェルネイルというやつは、紫外線を照射して固めるんです。樹脂、固めると聞くとすぐにエポキシをイメージするおっさんが多いと思いますが、ジェルネイルはウレタンアクリレートが原料になっているものが多いようです。紫外線を照射しない、ただ塗って乾かすタイプのものはニトロセルロースが主流みたいですね。私の慣れ親しんだギターの世界だと、ニトロセルロースラッカー塗装と言われれば「ああ、あれ」と話が通りやすそうです。

 そう聞くとなんとなく親近感が湧いてきませんか?

 とかなんとか言っているうちに完成です。実に鮮やかな手技。そしておふたりとも手がきれいでした。

 Ponjeeさんでは、この爪の立体感を出す塗り方に独自の技術があるそうで、見ればたしかに立体的。

 そのあたりの専門的なところについては、残念ながら比較対象を知らないのでアレなのですが、ネイルって何より大事なのは、爪をきれいにしてもらった人のテンションが上がって生活にハリが出ることなんでしょうね。伺ったところではネイルサロンに通う頻度は美容院に通うのと同じくらい、月に1回くらいが平均かな、ということなのですが、それについてもただ髪を切ってもらう、ただ爪を改造してもらうだけではなく、その体験のために通う部分は大きそうです。

 考えてみれば世の中、衣食住や安全保障みたいなクリティカルな仕事ばかりではなく、文化・芸術みたいに人の心を支える面の仕事もたくさんあります。写真も思い切り商業向けの撮影を除けば、良くも悪くも「べつに要らんもの」でしかありませんが、人の心を豊かにする役割は間違いなく果たしています。

 ネイリストさんは女性の心にうるおいを与える仕事なんだなあ、といたく感心しつつ、最後にPonjeeの皆さんの写真を撮っておいとましました。

 Ponjeeさんのサービスが女性の心だけを潤すものかといえば、そんなことはありません。この写真で見えるようにテイクアウトの食事も各種扱われています。お腹を満たして幸せにしてくれますよ。

 というわけでPonjeeの皆様、取材ご協力ありがとうございました!


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