ついに宇和島取材2022も最後の記事となりました。お付き合い頂きましてありがとうございます。編集後記は編集後記で書きますからね。とにかく勉強になることばかりでした。
取材ラストに伺ったのは、宇和島で麦味噌を手造りされている井伊商店さんです。
WEBサイトを拝見すると工程が丁寧に解説されておりまして、私達が伺ったのはちょうど仕込みの日の作業後でした。ちょっとお疲れの様子の代表、井伊さんでしたが、快く迎えてくださいました。

当代の井伊さんは三代目。お祖父様の代から麦味噌一筋で、しかも原料も四国内で調達されているそうです。地域性バリバリですね。
お話を伺っていると、作業場の壁や天井が黒くなっているのが目に入りまして、これは麹を使って味噌を作る上で環境に大きく依存すること密接につながっているとのお話。
麦味噌は蒸した麦に麹菌を付け、発酵させて作るので、麹にとって最適な環境になるよう非常に気を使うそうです。つまり麹優先で仕事場のあれこれを決められているんだとか。

麹はこの室という小部屋で管理、培養されるそうです。壁が黒いのは塗装ではなく、麹菌によって色が付いているとか。これが麦に付くと味噌になると聞くと、普段からあれこれ発酵食品を食べているにもかかわらず不思議な感じがします。


この「もろぶた」も、一気に新しいものにしてしまうと菌の根付き具合が違うので味が変わってしまう恐れがあり、かといって同じものが永久に壊れず使えるわけではないのでじわじわ新しいものに替えておられるそうです。

新しいものほど良いに違いない、というデジタルカメラの世界とは根本的に違うのは、中心に麹があるからですね。
作る人がいなくなってきた問題
新旧入れ替えるといえば、もろぶただけでなく味噌を寝かせる樽も永遠に同じ使えるものではなく、一定の時間が経てば修理や新造が必要になるものですが、最近はその樽を作る人がほとんどいなくなっているんだとか。
現在の樽はまだ修理で対応出来ているものの、それすら出来る人が少なく、ひょっとすると次は木の樽を諦めざるを得ないようになるかも、というお話もありました。

このスコップも、味噌樽の中で使うのに金属製だと樽が傷ついて寿命が短くなってしまうので、もう少し柔らかい素材のFRPで出来たものを使われているそうですが、作っていた会社がなくなってしまい、代替品を探しておれるそうですが、現在見つかっていないそうです。

木製の樽だけでなく、かなり新しい素材のFRPスコップもメーカーがなくなってしまうところに、需要と供給のバランスが崩れたらいつ何がなくなってもおかしくないんだなあ、という恐ろしさを感じるところですが、確かに太古の昔から受給のバランスが世界を作ってきたところはあるので、このブログで仕事論を扱うのであればそういったバランスの点についても論じるべきところなのかもしれません。
井伊さんにはお疲れのところ、取材にご協力いただきましてありがとうございました!
そして昔ながらの麦味噌をご所望の際は、地元の素材で丁寧に作られている井伊商店の麦味噌を是非。