NIKON D800 + AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

 過日、友人がD800を譲ってくれた。そのD800に、また別の友人から譲り受けたAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gをくっつけて最近は何でもかんでも撮っている。

 現在、D800の発売からはすでに13年が経過している。
 レンズの方も2011年に発売だから14年経っており、デジタル世界では骨董品の域に入ろうとしているが、ところがどっこい両者ともまだまだ戦える性能を持っている。

 むしろ最近、仕事用のメイン機はNIKON Z8を使用しているのだが、これはもう電気自動車のようなものだなと感じる。もともとデジタル一眼レフなどというものはハイブリッド車のようなものだったのかもしれないが、風味程度に残っていた機械らしい部分がほぼ完全になくなったシャッターなしのミラーレス一眼は、その合理性や画質に感嘆しつつも撮影体験があまりに無味簡素である。ターミネーターのT800とT1000の違いみたいなものだろうか。

 仕事の際は、その無味簡素さのおかげで仕事に集中できる部分もあり助かっているが、趣味で合理性を求めるほど私は野暮ではないつもりである。無駄、逸脱、倒錯こそが趣味の真骨頂であり、アマチュアの甘えの特権を謳歌しないで何が趣味かという感じがするので、このD800の無駄に大きな振動やシャッター音を楽しんでいるところである。

 何より画質が良い。

 D800のRAWはほどよく柔らかいのである。
 ハイライトは早めに飽和を始めるので気が抜けないし、シャドーも分離がそう良くはない。だがその分離の悪さが不思議な柔らかさを持っていて心地良いのである。優れたアナログ機材で録音した音源のような感じで、解像度が高いのに鮮鋭過ぎないのである。

 以前同じ機体を借りた際、このRAWにいたく感心し、それならと同じニコンのD810を購入してみたところからZ8に至るまで、D810、Z6、Z7、試用したZ6II、Z5と、RAW現像の泥沼を這い進むような扱い辛さであった。

 D800やZ8、D500系のセンサーを搭載したD500(試用)やZ50はほとんどRAW現像でいじる必要がないくらい最初からほどよいトーンになっており、ニコンはカメラごとに色味がばらつく傾向はあるものの、大きく分けると極端にコントラストが高く硬いRAWになってしまうか、ほぼ手を触れる必要がない完成品のようなRAWが手に入るかのどちらかで、えらく極端である。そういえばDfも素晴らしいRAWだった。

 画質の面では現在、Z8がたいへん良く、これ以上のものは必要ないと使うたびに感心するし、AFもまだ信頼感がそう高くはないがZマウント初期と比べると随分まともになっているから、ここぞという撮影ではZ8を持ち出すのであるが、趣味の撮影は基本的に「ここぞ」ということはない。撮れていなくとも笑って済ませられる。それならカメラは楽しい方が良いのである。

 D800は次代のD810で思い切り修正が入ったくらい無駄に機械的な振動が大きいが、それも含め「撮っているなあ」という感じがして撮影体験が楽しい。特にこのレンズとの組み合わせで画質がまとまっている感じがして気持ちが良い。SIGMAの50mm F1.4 DG HSMもそのうち試してみたいと思っているが、NIKON D800 + AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gの組み合わせで出る独特の柔らかさは、他の組み合わせでは出ないだろう。新品が3万円で買えるレンズとはとても思えない出来の良さだ。

model : noel NIKON D800 + AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

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