APS-Cセンサーで使うSONY FE35mm F1.8 (SEL35F18F)

 α6700を買って久々にSONY APS-C機を使いだしたところ、そういえば以前使っていた際にちょうど良い標準レンズがなく、もどかしい思いをしたことを思い出した。

 最初にTouitの1.8/32を改めて購入してみた。
 当たりを引けば納得の写りだが、必ず行って戻って合焦というピント合わせは使っていると疲れるし、少しでも動く被写体はもう追従しようがないほどAFが暴れてしまう。おじさんは気軽なAFレンズを求めているのである。

 そこでふと、フルサイズ用の35mm F1.8であるところのSEL35F18Fを使ってみたところ、妥協しながらではあるものの「まあこれはこれで良いか」と落ち着くことが出来た。通称はFE 35mm F1.8。

 型番の末尾にFが付いているのは、先行して同じ35mm F1.8のレンズ、SEL35F18があったからで、こちらはAPS-Cセンサー専用であり、また手ぶれ補正が内蔵されているので通称はE35mm F1.8 OSSである。

 こちらはイメージサークルを使い切れる気持ちよさがあるものの、設計はNEX時代の初期のものなので明らかに古く、余裕のある写りではないので試用したもののパスすることにしてF付きの方(考えてみれば通称では頭に、型番では末尾にF付きだった)を購入した。価格も重量も倍程度したような気がする。

 このSEL35F18F、結論からいってしまえばフルサイズ機に付けたほうが本領を発揮する。
 上手く使うと非常にシャープで立体感があり、前後の分離が良くドキュメンタリーに向いている画質だ。しっとりと艶のある表現が得意で素性が良い。

 しかしAPS-C機であるα6700に付けると、その立体感がだいぶ削がれてしまうのがもったいない。下手にフルサイズ機で使った時の良さを知っているだけに、APS-C機に付けると写りのレベル自体は非常に高いのに減点されて見えてしまうのだ。それがこのレンズの最大の不幸かもしれない。

 なるほど広角はトリミングして使ってもやはり広角、などと思うが、α6700の後で富士フイルムのX-M5を購入し、XF35mm F2などF1.8~F2クラスのAPS-C用標準単焦点を2、3本使ってみたところ、前後感は似たような印象だったので、これはフルサイズ用35mmをAPS-Cクロップして使うからというよりも、APS-Cセンサー自体が持つ印象なのかもしれないとも思う。

 現代においては控えめなF1.8という開放値は、極端な大口径レンズのように開放で使わないと損という感じがしないのも、結果として画作りを優先するのでアリだと思う。このボケ量を十分と思うかどうかは感性の問題だが、個人的には撮影時に物足りないくらいのほうが後で見るとちょうど良い。

 ボケ質はしっとりとしており、様々な距離で使ってみても荒れにくい。AFも静かだが写りも静かなレンズだ。

 カラーバランスも良いし、とにかくどう使っても丁寧な仕事をする良いレンズなので、SonyのAPS-Cセンサー機で標準レンズに悩まれている方は使ってみてほしい。