こんにちは。
今回から当ジャーナル内に新しくカテゴリーを設けまして、Youtubeの別チャンネルとして運営しております「おしごと日本」でのインタビューを文字起こししてお送りいたします。
このおしごと日本チャンネル、日本の色んな職業人の方に仕事論、仕事にまつわる技術論を伺って回ろうというものでありまして、セカンドシーズンをスタートしようとしたところでコロナウイルス爆発、ぜんぜん計画を進められておりません。辛い。
今回のインタビューは当方の都合により順不同になっておりますが、バイオリン弾きの小夜子さんからお話を伺ったものです。
小夜子さん回に限らず、文字起こしにあたり、会話をしたものを単純に文字起こしした状態では(特に伴の)しゃべくりが日本語として成立していない箇所が多くありますので、加筆修正を行っていることをお断りしておきます。
というわけで本編
伴:どうもこんにちは。
小夜子:こんにちは(笑)
伴:お隣にいらっしゃる綺麗な縦ロールの女性が、小夜子さんです。
小夜子:どうもはじめまして。
伴:バイオリニストっていうと、否定はしないけどみたいな感じで…どう自称されます?
小夜子:バイオリン弾いてますっていうだけで…バイオリニストっていうとすごくクラシカルなイメージがいまだに、やっぱりバイオリンっていう楽器自体がクラシック楽器というイメージが強いし、ハイソな人がやっている、ちょっと高嶺の花な人なかんじになっちゃうのが…
伴:縦ロールがそう…
小夜子:巻いてきましたけど、今日撮影だから頑張って(笑)
伴:ありがとうございます。
縦ロールは高貴なイメージですよ。お蝶夫人から始まって。
小夜子:あ、そうなんだ。
そういう印象が言葉自体にもあるじゃないですか。バイオリニストっていうと特に。
伴:確かに。バイオリンプレイヤーみたいな感じですよね。
小夜子:なので、バイオリン弾いてます、みたいな。あとは他にも弾くだけじゃなくて、曲書いたりとか、たまにモデルやったりとか色々やっているので…
伴:今度、写真撮りましょう。
小夜子:是非。嬉しい。
伴:アー写楽しそう。
小夜子:アー写撮りたいですね。最近更新してない。
伴:前に、サックスプレイヤーの人に聞いたら、クラシックにもサックスってあるんですってね。
小夜子:そう、こんなこと言ったらでもクラシックのサックスの人に怒られるけど、個人的にはクラシックにはサックスはいらないと思っている…
伴:俺も入っている曲自体がよくわかんないからあれですけど、その人はサックスプレイヤーかサキソフォニストかっていう呼称で悩んでいるというか、それで分けている人で、その人はサックスプレイヤーって言ったかな。
ジャズ寄りだからサックスプレイヤーって言って、でもクラシックでやっている人はサキソフォニストって自分で呼んだりするよねって話を教えてくれて、へぇって思ったのをいま思い出しました。
小夜子:やっぱり言葉のイメージってありますよね。
伴:フォトグラファー、カメラマン。
小夜子:どっちなんですか?伴さん。
伴:僕はカメラマンです。
小夜子:カメラマン。フォトグラファーではない?
伴:わざとカメラマンと言っていて。厳密じゃないんですけど、カメラマンっているのは、こういうの撮ってって言われて、はい、撮りますという。
設計図があるやつが降りてくるっていうのがカメラマンだったりするので、新しい仕様を定めて、こういうイメージはどうでしょうって提案するのはフォトグラファーさん的な。
小夜子:なるほど。一般の人間からすると、その違いよくわかってなかったです。何が違うんだろうって思ってたけど、そういうことなのか。
伴:でも英語圏だと全部まとめて、写真家もカメラマンもフォトグラファーも全部フォトグラファーなっちゃうんで、日本だけなんとなくニュアンス、空気読んでねっていう。
小夜子:ありますよね。日本語にしたときの言葉のイメージの違いみたいなの。
伴:カメラマンっていったら本当はポリティカリーにインコレクトなんだよね、ほんとは。カメラパーソンて言うのかな…
カメラマンって検索すると、英語圏でのカメラマンっていうのはENGってビデオカメラを背負って取材に行くやつが…
小夜子:静止画じゃないってこと。
伴:そうそう、あれはアーティストじゃなくてじゃなくて技術者だよっていう、音声マンみたいな。そういうニュアンスでカメラマンなんで、クリエイティブじゃないっていうと語弊があるな…そういう仕事じゃない技術側だよって、テクニシャンだよっていう。
小夜子:その点ミュージシャンも似てるかもしれないですね。私もスタジオミュージシャンはカメラマンに多分近くて、曲書いたりとか自分でCD出してる人はきっとフォトグラファーに近いんだろうなって、いま話を聞きながら。
伴:写真家さんとかっていうイメージに近い。
小夜子:確かに、写真家っていうと急にクリエイティブなイメージ。
伴:写真家さんっていうのもう一個別であって、写真家さんてね、自分の撮った作品を売っている人と言うニュアンスが強いんですよ。
小夜子:なるほど。
伴:これは明快な区分けじゃないんで、僕の解釈ですけどね。アーティストさんていうやつですよ、ミュージシャンでいう。
小夜子:ミュージシャンでいうね。
伴:ミュージシャンて言うか、アーティストって言うかで結構ニュアンスが違うと思うんですけどね。
小夜子:確かに。
伴:そのへんですね。だから小夜子さんがご自分で、自分の呼称を悩むの少しわかるんですよ。
小夜子:フォトグラファーであってカメラマンではない。
伴:僕カメラマンから写真家にいまスイッチしようとしてるんで。
小夜子:じゃあいまちょうどその間を…
伴:そうそうそう。
小夜子:私も両方やってて、頼まれたものを演奏するっていうのももちろんやるし、いわゆる技術職的なこともやるし、でも自分の活動として自分のやりたいこともやるっていう感じなので。
伴:自分の曲を演奏するとか、創作側のこともやられてるってことですね。
小夜子:どっちもやるので…でもバイオリニストって両方指すのかな。
ソリストでオーケストラとかバックにバリバリで弾く人もやっぱりバイオリニスト。で、スタジオミュージシャンでバイオリン弾いてる人もバイオリニスト。
伴:ギタリストみたいな。クラシックのギターの人もギタリストだし、メタリカの人もギタリストだし。
小夜子:その辺、ミュージシャンも割とふわっとしているのかもしれないですね。楽器ごとの区切りだけで、やっている内容は自発的な物なのか、言われたことをやるのか…あんまり呼称にエンドしてないかも。
伴:確かに楽器の分類っていう意味で、音楽のジャンルみたいなもんで、バイオリン弾いてるからバイオリニストですっていうのと、プラスなにを仕事にしてるというかでスタジオミュージシャンやってるとかアーティスト側やってるよっていうので区分けがあるかもしれないですね。
小夜子:そうですね、確かに。
伴:そう、尽く左様にめんどくさいですよ、分類がめんどくさいんですよ。
小夜子:めんどくさい。印象って覆すのが大変じゃないですか、最初に与える人の印象って。バイオリン弾いてます、くらいなふわっとした…
伴:最初に与える印象か…
小夜子:ちょっと前ですけど、人は見た目が10割…あれ9割…
伴:えらいでかい数字だったのは覚えてる。
小夜子:みたいな感じの10割だっけ、9割だっけっていう本があった…
伴:9?10?曖昧な…宮原氏から、曖昧な…9?9割か9割5分か、そんなもん。
小夜子:第一印象が大事っていう本があったなって。
伴:日本は…僕思うんですけど、日本は歯並びとかあんまり気にしないですよ。民族的に見た目にはかなり優しい民族で。
僕のアメリカ人の友達が、日本に遊びにきて僕の実家にいばらくいたんですよ。その時に一緒にテレビ見てたら、クイズ番組の雛壇で日本人の女性国会議員をバーっとお呼びして並べましたってやつをやってて、その友達が「日本人の国会議員てこんな見た目レベルでいいの?」っていって驚いてたんですよ。
小夜子:それね、思います。
伴:美しい美しくないとかね、可愛い可愛くないとか、美人ブサイクとかそういう問題じゃなくて、お金のかけ具合で。
小夜子:ちゃんと人前に出るんだから気を遣いましょうっていうことですよね。
見られる仕事だから、マナーとして…自己表現でそういう表現をしたいっていうのであえてその格好、気を遣ってない格好しているんならいいんですけど。
伴:ぶりぶり縦ロールの聖子ちゃん時代を抜けだせない、自民党議員の方をいまディスってますけど。
僕逆だと思ったの。おじさんなったんで、おじさんは全然見た目に気を使いたくなくなるんですよ、ほんとに。
小夜子:なんでですか?
伴:だって利益を生まないから。
小夜子:でも、ダサいおっさんって思われるよりは、かっこいいおじさんて思われる方が嬉しくないですか?
伴:別に…
国会議員の話にも繋がると思うんだけど、いいスーツを着て、髪を毎日整えて、歯を完璧にホワイトニングして爪を手入れしてやって、票が伸びるならやると思うんですよ。彼らそういう生き物なんで。
小夜子:伸びないのかなぁ…
伴:伸びないんだと思う。むしろ胡散臭くなってくるんだと思う。日本人の投票する側の感覚でいうと。僕もおじさんになって…
小夜子:おじさんて言う感じではないですけど…
伴:僕41なんですよ。
小夜子:そうなんですね。
伴:若い女の子と接して、写真をとることがあるから若い女の子と接するけど、だからといって僕、結婚もしてるし、どうこうなろうがないわけですよ。どうこうなろうと思ってたらそれが利益だろうから、そこを目指して、ちょっとでもカッコよく見えた方がってなるかもしれないんだけど。
小夜子:そうか。
伴:むしろ内面で勝負しようになっていく、おっさんなのは変わんないから見た目上はどんどん衰えていくし。
小夜子:女性からすると、すっごいだらしない感じのカメラマンさんがきたら…ちょっと嫌です。
伴:それはそうでしょうね。これは最低限のラインとして、カメラマンとしては気を遣ってますけど。
小夜子:だから全然そんな感じはないから、気を遣われているんだろうなと。
伴:シャツがメガネ柄だったりするんですよ。
小夜子:すごい、めっちゃオシャレじゃないですか!絶対見てる人はわかんないけど。
伴:台湾で買いました。台湾でうろうろしながら「めがね柄だ〜!」って
小夜子:オシャレされてるじゃないですか。
伴:オシャレじゃないですけど…不快感は与えないように一応気を遣ってますけどね。
先週とか髪の毛ボッサボサでえらいことになってましたよ。
小夜子:家にいる時とかはね、私もレコーディング前で譜面を毎日書いてる時とかは、見せられない感じですけど。
伴:ぶあついメガネにジャージを履いて、みたいな。
小夜子:あながち間違ってないですけど。
伴:いいじゃんいいじゃん、プライベートなことなんだから。
小夜子:そういう見られない時はともかく、少なくともステージに立った時は立って…
確かに演奏を聞きにきているのは正しいんだけど、でもエンターテイメントじゃないですか。
伴:すごい、いい命題を投げてくれてる。
現代日本のクラシック楽器界隈の問題をえぐるのが出てくると思うこの後…
小夜子:私、全ての人前に立つ仕事の人は、生まれつき私も小さいからすごいコンプレックスとか、あと割とぽっちゃりしてるなとか色々あるんですけど、与えられたものの中では努力すべきと思ってて。
伴:コードとしてね。
小夜子:別にいいんですよ、家で一人でっていう仕事だったら関係ないし、アウトプットさえよければいいんですけど…見られる、人を楽しませるんだったらそこもある程度はやんないとねって自分は思ってます。
伴:アシュケナージとかグールドとか、ああ言う人たちですら、ちゃんとタキシード着て出てくるという。
小夜子:そう。
伴:前、おじさんミュージシャンの…昔売れたバンドのボーカルの人がやってる祝いに、何かのご縁でお呼ばれして行って、スタジオミュージシャンの人たちが集まってて、すごい身長2mくらいのハグリットみたいなおじさんが出てきたんですよ。こんなんで。
小夜子:ハグリット!
伴:しかも陰気なハグリット! 出てきて…
小夜子:怖い怖い!
伴:ちょっと怖かったですよ!身長2mは言い過ぎ?
小夜子:めちゃめちゃ大きくて…ガタイよくて…
伴:あのおじさん何?って思ってたらピアノの人で、めっちゃいいのピアノ。すごいよく覚えてるくらいピアノが良くて。うわーって感動したんだけど、バンドの中でね。だけど、逆に見た目がそれだから強烈な印象が残ってるってもあって。
小夜子:演出してるなら全然いいんですよね。それでいいんならいいんですけど、やってる内容とマッチするとかだったら。
伴:日本の女性議員のみなさんにしても、日本を代表してるわけだから、いい高いスーツを買うとかそう言う問題じゃなく、いい感じにしてって思うんだけど。
小夜子:ちゃんとね、ビシッと決めていては欲しいですよね。
伴:美しくあって欲しい、ほんとの意味で美してあって欲しい。
小夜子:中も外も当然だけど、ちゃんと気を遣ってカッコよく…
伴:もちろん男性議員も、もっとカッコよくあって欲しいんですけど、アメリカで統計をとると、見た目がいいやつがバリバリ出世するんですよ、アメリカって。
小夜子:日本って出る杭を打つ文化だから、特に公職の人だと妬まれるんですかね。
伴:見た目はあんまり気にしないっぽいんですよ、見てて。
小夜子:そうなんだ。
伴:受付の女子とかを選ぶおじさんは見た目で選ぶんですよ
小夜子:全部それでいいじゃん!
伴:出世争いをしていく上では見た目は関係ないらしんですよ、日米で比べると。
アメリカは例えば、軍隊で将軍クラスの人とかを見るとめっちゃいい男ばっかなんですよ本当に。ハンサムさんばっかりで、ハンサムじゃないと部下もついてこないし、上の人も引き立てないらしいんですよ。
小夜子:年齢あがっていくとハンサムって、顔のつくり、目が大きいだとかそういうことではなく、雰囲気も結構関係あるから、そう意味では…
伴:いい男感が出てれば。
小夜子:いい男感が出てればいいんだと思うから、それは日本もおんなじでいいんじゃないかと思うんですけどね。
伴:髪の毛があるなしとかあんまり関係ない。
小夜子:関係ない。無くたってカッコよくスタイリッシュにしてる人はいるし、有ったっていっぱい有ったって不潔な感じの人もいるわけで。
伴:よく覚えてるわ…仕事の撮影で「ちょっとドレスコードがあるんで、Gパンとかやめて、ちゃんとしてきてくださいね」って言った会社の人がめっちゃフケが積もってて。お前、そういう問題じゃないだろって思ったの、記憶がある。
小夜子:そういう人がいるからドレスコード決めてるんでしょうね。
伴:でもね、その人たちも最低限ジャケット着て、Gパン履いてなければまあいいかって許さざるをえない…
小夜子:逆にドレスコード決めちゃったから、それにはハマってるしっていうことですよね。
伴:そうそう。アリバイ的にそれをやらざるを得ない部分あるらしくて。
ちなみにこのチャンネルは、想定しているリスナーっていうの?視聴者の皆さんはおじさんだと思ってます。
小夜子:そうなんだ。
伴:僕は写真を教えるチャンネルもやってるんですけど、非常に理詰めでいってるんですよ。理詰めでいって女の子を泣かせるタイプではあります。
小夜子:男性の方って、理屈で話をしたほうが納得してくれる感じがあります。
伴:すいません。
小夜子:私もレッスンをしてて、YouTubeではレッスンの動画をあげてないんですけど。男性の方、女性の方、結構大人の方が多いんですけど、どっちも。
男性の方は、これこれこうだから、こうしたほうがいいよって説明をしてあげないと、なかなか…納得しないし、逆にそれがふに落ちると男性の方のほうがもくもくと、女性より着実に努力をしていく感じはあるなって。
伴:まさに私もそう思ってます。その技術なりなんなりが、何の役に立つかっていうのがわからないとできない人っていうのがいて、それは男性に多いです。それをやると自分がどうなる、幸せになるとかっていう、そっちの自分の変化をイメージできないとできないのは、どっちかっていうと女性の方が多くて。
よく後ろがボケた写真てあるじゃないですか。後ろがボケるのはなんで?っていうのをおじさんは先に知らないと気持ち悪いんですよ。女性の場合はボケる、うちの子が可愛く見える、最高!みたいな、そっち側を先に教えないと、絞りっていうのがあってとかって全然聞いてくれないです。
小夜子:なるほどね。
伴:多分おんなじです。
小夜子:そうですね。一緒かもしれない…
伴:おじさんたちが見ているので、髪の毛がなくたっていい男はいい男っていうのは結局あんまり励ましになってないか…
小夜子:やりよう、見せよう、ですよっていうことですよ。
伴:見せようって難しいよね。
小夜子:私もこの仕事になって、ようやく意識するようになりました。
私音楽大学出てなく、普通に四大出て一般就職して…
伴:大学で何を専攻してた?
小夜子:栄養学を。
伴:栄養学! わかる! 優しいものを作ってくれそう。
小夜子:優しそうっては言われるんですよね。
伴:お腹に優しいものを作ってくれそうな、優しさが出てますよ。
小夜子:こないだ七草粥作りました。
伴:うわぁ…おいしくなーい。優しそうですねでもね。
小夜子:七草粥、卵入れると案外美味しいんですよ。
伴:食えそう。
小夜子:私も卵入れちゃいました。ほんとはダメなんだと思うけど、だって美味しいほうがいいじゃないですか。
伴:卵入れたから何がおかしくなるもんでもない。
小夜子:卵入れたからって七草粥は七草粥だし、入ってるし。
伴:条件は達成してますしね。
小夜子:そうそうそう…なんの話だっけ。
伴:ごめんごめん、ご経歴の話でした。
小夜子:そうだ!栄養学部を出たんですけど、元々栄養士として働くつもりはさらさらなく…家族と揉めた結果の栄養士の学部だったので。
日本の就職って、特に学部での就職の場合って、どこの学部を出ていたって関係ないじゃないですか、どこの会社に行くって。いいや、と思ってて、元々、雑誌とかの編集者とか映画とかの仕事やりたいなと思っていて。
伴:全然関係ないですね!
小夜子:はい。就活に命をかけてました。大学1年の入った時から、就活…そこになれば親から経済的に自立するわけだから自分の好きなことやっていいはずだから、学生時代まではお世話になっているから多少なり意見を反映しないといけないかなって思ってたんですけど。
伴:聞いてやろうかっていう。
小夜子:一人っ子なんで…あとどっちからも初孫だったんですよ。
伴:一人っ子政策みたいな。
小夜子:周りからも期待…そんなものはね除ければよかったんですけど、そこまでのバイタリティがその時はなくって…
伴:いい人なんでしょう。
小夜子:しかも中学受験とか割とみんなの期待に応えてしまったがゆえに、どんどん期待値が上がっていって…そっちにいかざるを得ない空気になってたんですけど。
いずれちゃんと自分が思ったことがやりたいとは思ってて、それが就活だってずっと思ってたから、大学に入った時から、サークルとかじゃなくてもう就活、という感じで。大学も3年の夏休みから、インターンとか行ってて。出版社2社行ったかな?就活も当然、実際受けるってなった時も映画会社とか出版社とか。
伴:映画作ってる、配給してる側ですか?
小夜子:はい。実際内定ももらえたんですけど、あえなく、家族の猛反対にあい…
伴:そうなの?もったいないなぁ
小夜子:そうなんですよ!そっちの人生も楽しかっただろうなぁって
伴:映画配給会社で、謎の邦題作る部署とかにいってほしかった。『愛と青春の旅立ち』とかって、おまえどっからそんなタイトル…一言も言ってない…
小夜子:全然違いますからね、洋題と邦題と。
伴:むちゃくちゃ。
小夜子:あえなく就活でも行きたい会社を辞退し…号泣ですよ。
伴:親御さんを悪者にする気はないですけど、大変でしたね。
小夜子:そうですね。一応それでも一部上場企業に入ったんですけど、内心は希望はゼロですよね。シーンみたいな新入社員でした。周りは「俺たち勝ち組」みたいな。就職氷河期だったんですよ、リーマンショック直後で、だからそんな中…
伴:年がだいたい分かった。
小夜子:はい。「就職でちゃんといい会社に入れた」「俺たち勝ち組」みたいな感じになってて…は? ていう感じでしたけど…
伴:就活戦線を勝ち抜いて。別に本意ではないけど、内定とって入社できたくらいだから結構優秀な…結構って失礼ですけど、優秀な評価だったんですねちゃんと。
小夜子:就活楽しかったんですよね。
伴:いいことですね。
小夜子:受験とかも楽しかったんですよ。
伴:向いてるんだ。
小夜子:こうやればいいって正攻法があるじゃないですか。
それがわかってくると、質問とかもきた時も、きっとこれってこう返したら喜ばれる、正解なんじゃないか、みたいなのがだんだん回を重ねるとわかってきたりして、うまくいくとすごい楽しかったり…
受験は辛くはなかったですね、嫌いな科目は勉強してなかったけど…という感じで、全然関係ない、大学も関係ないし、社会人になっても全然関係ないし、という感じで。
伴:バイオリンとまだ出会ってない感じ…
小夜子:そうなんですよ。一応会社員やってたんですよ、こんな感じですけど。
最初は運良く、人に恵まれてたんですよ、部署の先輩も上司もすごい良い方で。
上司の方とかも、土日とかゴルフの打ちっぱなしに連れってくれて、一から教えてくれたりとか、娘のように可愛がってくれて、部内コンペもあったりとかフットサルみんなで行ったりとか。
営業だったので、当然数字とか厳しかったけど、でも体育会系でいい意味の日本の昭和な感じの部署で、すごい面倒見が良かったので、仕事の内容自体にはさして興味がなかったんですけど、とりあえず新卒でなんも出来ないこの私にこんだけしてくれる人たち…どう考えたって足手まといじゃないですか、新入社員なんてなんも出来ないし、教えなきゃいけないし。
失敗するし、お給料も発生するし、なぜか結果も出してないのにみたいな。なのに、こんなによくしてくれる人たちだから、早く自分も仕事できるようにならなきゃと思って、3年くらいは興味あるとかないとかじゃなくその一心で頑張ってた感じ。
当然、大企業なので異動も結構あって、3年経つと直属の上司もいなくなり、その上の上司もいなくなったりして。自分自身も異動になって、全然希望じゃない部署に行ったりして…そうだ、私この仕事別に興味なかった…
伴:パッと思い出しちゃった。
小夜子:やりがいが、みんなの早く力になりたいっていう、それがなくなってしまったら、本来の…
伴:家族意識の幻想から覚めてしまったんだ。共同体意識がもう無くなったっていうことですね。
小夜子:無くなった。しかも大企業で、自分のキャリアなんて一切コントロールが効かない、総合職で入ってたのでどこに行くかもわかんないし誰と働くかもコントロールできないし。
伴:宮仕え大変ですよ。って俺半年くらいで辞めたけど。
小夜子:やってたんですか?
伴:会社員。あほか! 付き合っとれんわ! って半年ですぐやめました。
小夜子:早いですね!半年。
でも決断するのに5年かかりましたね、ちゃんと楽しかった3年含め。もう嫌だってなって、生きがいを求めて、社会人バンドを会社にいながらにして始めたんですよね。
伴:子供の頃にバイオリンやってたんですか?
小夜子:そうです。3歳から始めてて、12歳までかな、一応ちゃんと真面目にクラシックを学んでました。
伴:嗜みとしてやってた感じ?3歳からバイオリンを子供に習わせてるってすげー甲斐性ですよ。たいしたもんですよ親御さん。
小夜子:一人っ子なんで。
伴:しかも初孫初孫だから資本が集中するわけですね、そこに。なるほどなるほど。
小夜子:たまたまですけどね、バイオリンだったのは。元々「女の子だったらピアノくらいやらせよう」みたいなのあるじゃないですか、それくらいのノリで母は思ってて。
伴:意外に手に負担がかかるんですよね、ピアノ。
小夜子:しかも手が大きくないとできないんですよね。あたし絶対ピアノ向いてなかったと思うので、手が小さくて。一オクターブ届かない。
伴:音大に行きたかったんですか、本当は。
小夜子:でも音大に行きたいというのはなかったかな。音大に行ってもどうやって音楽を仕事にするのかがわからなかった。
伴:かしこーい。美大に行く奴らに言ってやりたいくらい。
美大に行って、先生も食えない人がやってて、生徒もわかんないから、そのまんま食えない人たちが毎年どばどば放出されてくる。
小夜子:周りが特にうち会社員が多く…父は公務員だったんですけど、割といわゆるサラリーマン家庭だったので、そうなると自分からお金の流れを生み出すとかフリーランスで働くというイメージが全くなくて。
伴:俺もそうなの。
小夜子:そうなんですか。
伴:親父はサラリーマンで。全然お金の流れ見えないですよね、サラリーマン家庭って。
小夜子:会社から雇ってもらう、会社に就職するって以外に、生きていく術がわからなかった。
伴:わかる、わかるわかる。そこから外れたら死に至る。
小夜子:ほんとそうです。資産家でもないし、自分で生きるためのものは稼がなきゃいけない、じゃあ大学出て就職…
伴:かといって会社勤めしても……仕事してる内容と入ってくるお金が完全に別のルートになってるから一度プールされるでしょ、もちろん。
自分が売り上げでお金もらってくるわけじゃないから、全然ピンとこないですよね、あの感じ。その辺リアリティがないっていうのがやっぱり…
小夜子:日本ももうちょっとお金の教育をすべきなのかなって思うんですよね。
アメリカにいた時期があるんですけど、向こうとかだとお金の教育、労働するみたいなことを学校にいる時代に結構学ばせてくれたり…
伴:レモネードを売らせてね。
小夜子:まさに! お隣さんの車を洗って何ドルもらうみたいな、なにやったかをつけてきて確か宿題があったりして。そうやって働くっていうことをちゃんと子供の時代から意識する、どうやって経済が回るかをなんとなく自分の肌感としてわかるといっていう環境になかったんでしょうね。
以下2/3に続く!