知らない町をカメラを持ってうろつくのはこの上ない喜びであるが、普段暮らしている見知った町で撮っていても案外面白いものである。
季節が変わりゆく中で、変化がないように見えてあんがい違ってくるのを発見しつつ歩くのがスナップ遊びの楽しみのひとつだ。今週はこんな花が咲いた、ぼちぼち光の角度が低くなってきた、と、日々の中の小さな変化を追いかけているだけで気づくと暦が一周している。これは同じ場所をぐるぐる回っているからこそ感じられる。
カメラマン稼業を始めた当初、前撮り仕事で毎日同じ神社で撮影していた。同じ場所で同じ時間に毎日撮影し、それを通年でやり、さらに1年、2年と繰り返すと、地球の自転はおろか公転による光の変化にすら気づくようになる。あれはカメラマン修行として非常に良い体験だったと今でも感謝している。
今日もスタジオまでの通勤スナップをしつつ、通ったことはあるのだけど今の時期はとくに撮るものがなさそうな、という路地に一度入りかけ、数秒立ち止まって逡巡し、やっぱり通ることに決めたら、ぷちぷちとカラフルな謎の実が成っていて得した気分になった。
角の先に何があるかは行ってみなければ分からない。よその土地で撮るのはすべての角でそれが起きるのだ。楽しくないわけがない。